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いちごミルクを探して


今までこんなに自販機を見るたび足を止め、なおかつメーカーに着目してチェックしたことはないんじゃないかと思う。もっと言えば、自販機を探すための外出もした。自販機ガチ勢である。



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目的は、缶タイプのいちごミルク。動機は推し活。


推しの絵柄が付いているとか、そのものズバリの商品があるとかではなく、いわば概念的なやつだ。



しかし缶のいちごミルクは意外と出しているメーカーが少なく、『ちいかわ』は現実世界の商品を出すことも多い。つまり、ラッコ先生と同じものを飲んでいる、という妄想を働かせることが容易なのである。


……ええ、最近ラッコ先生に夢中なんです。


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最も可能性が高そうなのは、サントリー製のもの。これまで飲んだことはないが、デザインには見覚えがちゃんとある。知らず知らずのうちに意識下に刷り込まれている、ベテラン王道商品である。


なのでサントリーの自販機さえ見つければいいだろう、と思っていた。冷たい甘味ドリンク部門のレギュラー選手だろう、と。

しかし、無いのだ。自販機目当てでないの外出時でも見つければ方向転換も辞さずに駆け寄り、舐めまわすように凝視するのだが、ピンク色の缶は不在。今シーズン休場してる? ホット商品に追いやられた? 今時期旬のいちごスイーツの一環としてあってもいいと思うのだが、外で飲む想定だと厳しいのだろうか。




諦めかけ、自販機を見るまなざしも弱まっていた頃。

とある店から出て目の前に設置されていたそれに、あった。なんか、ぬるっと見つけてしまった。「探していないときに見つかる」ジンクスはこうして補強されていく。


しかしナイスタイミングでもあった。というのもこのとき、ちょうどドライブのさなか。ラッコ先生もドライブ先の休憩で飲んでおり、つまり同じ状況。これはもう一緒に飲んでいるようなものである。

なのに私は、一瞬買うか迷った。あるのはわかったから、別に今でなくてもいいだろう、と。食事の時間が近いのもあって、その前にカロリーを摂取するつもりはなかったのだ。


いやいや、ドライブの折り返し地点だから糖分補給はある意味妥当。それに次いつここに来るかもわからないし、その間に入れ替えが発生する可能性もある。

でもでも、さっき100円玉を使いきったばかり。500円を崩すのはちょっと嫌なんだよな……。


埒が明かないので、とりあえずダメ元でコートのポケットを探ってみた。


すると硬い円形が1枚、指先に触れた。恐る恐るつまんで出してみると、銀色。ちょうど、100円玉きっかりである。


以前、大行列を前にしたラッコ先生は「悩んだら並べ」と仰っていた。

状況は少し違うが、曲解すれば「悩んだら買え」ともいえよう。


やっと会えた。


キンキンに冷えたピンク色のスチール缶からは、甘くまろやかな味がした。


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三谷乃亜
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