前世(食材)、というパワーワード
牡蠣と餃子の共通点をご存じだろうか。
この二つは、作家の原田マハさんが自分の前世に挙げたことがある食材である(ちなみに、餃子が新説)。
原田マハさんを初めて知ったのは『ジヴェルニーの食卓』(集英社)という文庫本を買ったとき。モネなどの実在する芸術家をテーマにした4つの短編集で、私はこの本で初めてアンリ・マティスを知り、モネ一家の複雑な家庭事情を見た。彼らの作品への興味もより湧いたし、すごく素敵な本に出合えたなと読了時に思ったことを数年経った今でも覚えている。
他に読んだのは『楽園のカンヴァス』(新潮社)。この二冊のイメージと、原田マハさん自身が美術関係の仕事に就いていたという経歴から、彼女はきっとクールで大人な女性なんだろうな、と勝手に想像していたのだった。
しかし、このイメージは『フーテンのマハ』(集英社)を読んでガラリと変わった。いや、イメージが増えたといった方が正しい。スーツを着こなしてバリバリ働くマハさんがいる一方で、牡蠣を昼・夜と食べまくり、翌日旅館でダウンするマハさんもいるというのは、個人的に衝撃的だった。
そんなマハさんは餃子の生まれ変わりであることを宣言されたのだが、他の人にも「あなたはなんの生まれ変わりですか?」¹と聞くらしい。「好きな食べ物は何ですか」よりもワクワクしませんか? 少なくとも私はする。
その食べ物に対してかなり熱量がないと前世だと言えないだろうから、なんとなくで回答できない雰囲気がある。そして話をしていくうちその食べ物に更に愛着が湧いちゃったりなんかして……わあ、私もみんなと語ってみたい。
ちなみに私はかぼちゃ。過去記事でもかぼちゃかぼちゃ言っているだけあって、読んでいる途中にシルエットが速攻見えた。
マハさんに倣って、前世での活動を思い出してみようかな……。
¹:『フーテンのマハ』、92頁