
求肥入りのパイを食べたら、視野が広がった
私は今、悩んでいる。
自分の気持ちを尊重するなら1位にしたい。しかし、それでは公平性が崩れてしまうかもしれない。
だからこそ、私は"これ"の存在を知っていながら、長らく手に取ってこなかった。
問題の品は「餅パイ」。
つまり、求肥入りのかぼちゃパイである。
***

もうじき創業から60年を数えるという、「御菓子処 ひとつ風」。電車通り沿いにありながら駐車場もあるという、誰にとっても優しいお店である。
立体的なパイはこれまでにもあったが、中央から餡が覗いているのは初。生地の四隅を中央でまとめたようなフォルム、そしてそこから覗く黄色。なんだかお花みたいでかわいい。

このツヤってるのが求肥。食べるまで構造がわからなかったのだが、どうやら餡を求肥で薄く包み、それをさらにパイで包んでいるっぽい。
※食べかけ失礼

これがね、ほんっっとに美味しかったの。
生地はしっかりめで、小麦の甘さがしっかり感じられる。焼きめが薄めな分、生地の風味にすべてが支配されることもない。
そして「餅パイ」の主役、求肥。これがすごい。
パイと求肥の組み合わせは初体験だったのだが、こんなに相性が良いとは思わなかった。
まずその瑞々しさ。
パイ生地と餡のクッション……と言ったら伝わるだろうか。コクや甘さがないニュートラルな瑞々しさがあることで、味覚が整理される感がある。
そして、ねっちりくにくに食感が厚めの生地と非常によく合う。
以前読んだ本に「咀嚼の速度を同じだと美味しい(大意)」と書かれていたのだが、この求肥とパイの関係もそうなのかもしれない。一般的な薄め生地だと、求肥だけが口内にとどまってしまうだろうから。
求肥について語りすぎたが、かぼちゃパイの本分はかぼちゃ餡である。いくら求肥とパイが美味しくても、餡がかぼちゃでなければダメなのである。
……かぼちゃ餡、めちゃくちゃかぼちゃやないかい(お約束)。
他のかぼちゃパイと比べてもだいぶかぼちゃ。中心部の分厚い餡密集地なんて幸福そのものである。もはや中身だけでも味わいたい。手のひらサイズに美味しいものが詰まりすぎている。最高か。
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しかし、本当にいいのだろうか。
生地もかぼちゃらしさも余裕で合格しているが、求肥はあまりにもブースト要員すぎる。名前も「餅パイ」だし。そもそも餅のほうが主役っぽいし。
……いや、むしろ全然アリにすべきかもしれない。
求肥入りだからといって締めだしてしまっては、かぼちゃパイの進化を止めてしまうことになるのではなかろうか。
「かぼちゃ餡と生地だけでどれだけ完成度を高められるか」は非常に重要な観点である。だが、それと同じくらい「追加要素による新たなアプローチ」も必要なのだ。偉い人も、"現状維持は後退に繋がる"と言っていたではないか。
餅パイは、いつしか狭くなっていた私の視野を広げてくれた。また新たな気持ちで、かぼちゃパイ探しに繰り出していけそうである。
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