建築とWeb ― スケルトン・インフィルとHTML・CSS
建築とWebは似ていると思います。(3回目)
スケルトン・インフィル
建築にはスケルトン・インフィルという考え方、つまり、スケルトン(構造)とインフィル(内装・設備)を分離してメンテナンス性を高めようというものです。
それはそれぞれの寿命の違いに由来します。構造は30〜40年(あるいはそれ以上)という比較的長い寿命を持っています。それに対し内装は10年程度の短い寿命です。
この時、構造と内装・設備が一体化していると設備を直したいだけなのに構造まで一緒に直さなくてはいけないことになります。
もう少し具体的に言うと、水道管が構造壁の中に埋め込まれていたら、水道管を直す時に壁をぶち壊さないと直せないような状況です。
スケルトン・インフィルはそういった不便さを取り払い、メンテナンス性を高め、建物の寿命を延ばすことができます。
HTMLとCSSの分離
Webでも同じようなことがあります。HTMLは文書構造を示し、CSSは装飾を担当します。HTMLはどこか見出しでどこが文章かを示すだけで、フォントのサイズとか色とかは表しません。純粋にどのような文書なのかを記述するのがHTMLの仕事です。
一方でCSSはHTMLでは記述しないフォントサイズ、色、配置などを担当します。文字がどんな大きさで色なのか、どういうレイアウトにするのかがCSSの仕事です。構造と装飾を分離することでセマンティックスを実現することができます。
逆に文書構造と装飾を同じにした場合、レイアウト実現のために文書構造をいびつにしたり、文書構造とは無関係なマークアップをしたりし、本来持っている文書構造とは別のデータができあがってしまいます。その例がかつてのテーブルレイアウトでしょう。
分離することで、そのしがらみから解放され、無意味なマークアップや不必要なタグ付けをしなくて済み、文書を機械が読んでも分かりやすいものができます。
構造と装飾の分離はメンテナンス性を高める
建築、Webのいずれにもしても構造と装飾の分離はメンテナンス性を高めています。建築の場合、建物それ自体の寿命よりも中身のほうが先に壊れます。給湯機器、水道、空調などは10年もすればいろいろと問題が起こりやすくなり、更新が必要になってきます。
Webの場合、コンテンツを更新していくこともありますし、PDCAサイクルの中で改修が必要になってくる場合があります。その際に上記の分離がなされていると更新のコストを下げることができるのです。
分離しているから、建物を変更しなくても内装を入れ替えることができます。最近流行りのリノベーション住宅などはこの例です。わざわざ立て直さなくても、空間を新調し、価値を維持、高めることができるのです。
Webも極端な話、HTMLを変更せずともCSSだけでデザインをガラリと変えることもできます。HTMLとCSSが分離しているからこそ、デザインの修正も容易に行えます。
作って終わりじゃない
建築・Webのいずれにも共通するのは竣工/ローンチが全てではないということです。使われていき、完成時から変容していく可能性を含んでいます。デザインはそれに堪えうる必要があるのです。
そして、その可変性というのが建築・Webデザインの難しさでもあり、他にはない面白さなのではないでしょうか。
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