【読書】ガソリン生活/伊坂幸太郎
あらすじ
大学生の望月良夫は弟の享との運転中に、偶然会った女優の翠を目的地へ送り届けることに。
だが翌日、翠は事故死したことで、その謎と事件に巻き込まれていく。
良夫と享は、翠を追いかけ回していた芸能記者・玉田と知り合い、姉や母までも巻き込みながら、ドタバタを解決しようとするが…。
感想
人間の事件と車同士の会話が、散りばめられた伏線とことの全体像を創り上げる。軽快な文体に愛すべきキャラクターが立ち回り、目が離せない。
緑デミオが初心者の良夫に運転技術のことで怒る場面で、私もそれたまにやります!ごめんなさい!と思うのも面白かった。
他の車との交流のなかで人間について語るのも、客観的で新鮮。そうだよなぁ、人間ってそういうところあるよなぁ、とか。車の言葉の言い回しや慣用句も独特なのに説得力というか妙に納得できるもので、くすっと笑える。
車同士が会話するという童話的な要素なのに、自分も車になったみたいな気持ちで読めた。
何より、伊坂作品の家族の形というか、距離感、会話のテンポ、キャラクター性がとても心地よい。
甘すぎず理想的すぎず、それでも確かなぬくもりがあって、それをお裾分けしてもらえるような。
今作もユーモアに溢れたミステリーでした。