「うつ病」は治さない

 うつ病とは、もうかれこれ3年近くの付き合いになるが、私はその年月の中で、一つ悟ったことがある。

 それはうつ病は治らないということだ。うつなどの精神疾患は「完治」ではなく「寛解」と表現するらしいのだが、私は敢えてうつ病を治そうとは考えていない。

 最初は早く元通りになりたくて、うつ病になってしまった自分が嫌でどうしようもなかった。どうすれば治るのか、そもそも本当に良くなるのか。そういう気持ちばかりが胸の中をぐるぐるして苦しかった。

 だが、ある日、ふと「治さなくていいのでは??」と思い付いた。散歩していたんだったか、シャワーを浴びていたのか、はたまた授業中に考え事にふけってしまった時だったか、何をしていたときにそう思ったのかは忘れてしまったが、ある瞬間に「うつ病になる前の自分より今の自分の方が心地よい」ということに気が付いたのだ。

 うつ病になる前は、生真面目で「~せねばならない」「こうあるべき」など窮屈な考え方にはまっていて、周りに如何に迷惑を掛けず役に立てるかを基準にして動いていた。だが、うつ病になるとそうもいかない。自分を一番大事にし、ゆっくり休養を取る必要がある。最初はこれが全く出来なかったし休み方もわからなかったのだが、慣れてくると「まあいっか」「これはこうでも大丈夫」など、いい意味での「適当」を覚えた。

 そうなってくると、生きることが少しずつ楽になってくる。今まで自分に課してきた呪縛が解けていき、身体の力が抜けるのだ。うつ病を患うと、絶対に元の自分に戻ることはないし、完治も存在しない。だが見方を変えれば、自分を縛っていたものを破ってアップデートされた姿になれると言うことだ。うつ病とは脱皮そのものだと、私は思う。

 ここまで来るのには並大抵のことではないし、私はネガティヴのどん底まで下ってからやっとポジティヴになれるタイプなので、どん底期は本当に辛かった。だが、私は一生、うつ病と付き合っていくつもりだ。うつ病がそばにいれば前の窮屈な自分を思い出せるし、その度に今の自分を確認できる。うつ病を寛解させることで自分の身から離すのではなく、向き合っていくことで、もっと生きやすい方法や自分にとっての心地よさみたいなものを見つけていこうと、私は思う。

 だから、うつ病は治さないつもりだ。

 

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