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歯医者さんが怖いのはなぜか真剣に考えてみた

 事の発端は休職中に少し体調が良くなってきて、今しかできないことをやってしまおうと思い付いたことにある。

 いろいろ考えた結果、長らく放置していた歯を治療しようと予約を入れたのだが、ゆく道々で急に不安になってきた。

 「歯が汚い、歯石だらけの虫歯だらけ、よくここまで放っておいたな」などと言われたらどうしよう。麻酔は痛いのだろうか。親知らずを抜くことになったら面倒だな。

と、私の頭の中は忙しくまわった。受付を済ませ問診票を書くと、治療室に通された。家族経営の穏やかな雰囲気の病院で、歴史はあるものの機材は新しいものを揃えてあった。

私を担当してくれたのは若い女医さんだった。優しくて丁寧な治療をしてくれたのだが、椅子に寝そべる私の手は緊張で強く握られていた。

自分の握力に気付いた私は、気を逸らすためになぜ歯医者が怖いのかを考えてみた。

まず、音が怖い。聴覚過敏の私はなおさらなのだが、キュイイイイイイインンというあの独特の刺すような音だけでも不愉快だ。あれが好きだという人が居たらドMに違いない。腕のいい歯科衛生士さんや医者だったら音の割に無痛で処置してくれるのだが、上手い下手はお構いなしに音で脳が痛がってしまう。

次は痛みだ。歯を削る痛みはそれほどでもないのだが、歯の状態を見たり歯石除去をしたりするときが案外と痛む。しかも、いつどこが痛むか予測不可能なのもあって、患者は怯えるしかない。改めて考えてみると、歯科医院は他の病院とは異なる独特な世界観をもっている。

私は医療脱毛の真っ最中で、元々痛みには強い自信があったしレーザーの痛みにも耐えることができている。そんな死線をくぐり抜けたのだから歯の治療の痛みなど、どんとこいと構えていた。が、痛い痛い。歯茎が痛い。血が出るわ振動で顎が震えてかゆいわで、心中大騒ぎだった。

怖い理由はまだある。それは、囲まれることだ。担当医が治療するのはもちろん、横には歯科衛生士さんが控えていて補助をしたり説明をしたりしてくれる。根が人見知りな私には、あっちにもこっちにも人がいて話を聞き答えなければならないという状況が非常にストレスだ。「痛かったり何かあれば手を挙げてくださいね」と言われるが、そこまで囲まれているとどっちの手をどう挙げれば気付いてもらえるかという計算もしなければならない。めんどくさすぎるではないか。「いたいよー」などと音が鳴るボタンでも持たせておいて欲しい。

などと考えているうちに、その日の治療は終わった。あと何回お世話になるかわからないが、綺麗で健康な歯が手に入るまで怖さと向き合っていこうと思う。

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