成仏日記【2】はじめに
前書き
②と題してあるのに、ここから読み始める変わり者はそういないと思うが、このシリーズは私の家庭環境をある程度押さえた上で読んで頂くと因果関係がわかりやすいため、初めましての方はどうか①もお目通しください。
はじめに
私が父を最初に異常だと思った日のことを、今でも鮮明に覚えている。それは、6歳離れた末っ子がまだ母のお腹の中に居たときにまで遡る。
当時の母はつわりに苦しんでおり、吐くときはトイレに駆け込んでいたものの、間に合わず流しや洗面所などに行くこともあった。ある日、それを見た父が「吐くのはトイレでしろ。流しは吐く場所じゃないだろ」と冷たく言い放ったのである。私は幼いながらも衝撃を受けた。目の前の男が何を言っているのか全く理解できなかった。
なぜお腹に赤ちゃんが居る母を労ろうとしないのか。声を掛けて背中をさすろうと思わないのか。そもそも、流しを掃除したことなど一度もない人間の言うことでないじゃないか。
父がおかしいのだと理解したこの日から、私は成長するに従ってあらゆるジャンルの「毒」を持った父を認識するようになった。毒の見本市のような男だ。父は私たち家族のあらゆる障害になったし、それが実父であるということが私は未だに受け入れられずにいる。友だちや職場の人が家族の話を楽しげにしたり、私の家庭事情が正常だという前提の元でされる話に適当に合わせたり、とにかく生きる上でいちいち妨げになるのだ。
だから、ここで敢えて過去を振り返り、父の「毒」を私の中から吐き出していきたいと思う。父は背中をさすりもしないし、私がなぜ吐いているのかすらわからないだろうけど。