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20091115 上下する睾丸

 前谷惟光(まえたにこれみつ)$${^{*1}}$$という漫画家の「まんが寄席」を買った。古本で購入した$${^{*2}}$$。古典落語のあらすじを漫画と短い文章とで紹介したものである。全部で六十六話が収録されている。前谷の漫画で有名な作品には「ロボット三等兵$${^{*3}}$$」がある。

 「宿やの仇討$${^{*4}}$$」という噺の解説文で、「わずかに隣部屋の会話をもって睾丸$${^{*5}}$$が上がったり下がったりする様な話を作る作家は今日皆無」という表現が出てきた。 確かにちょっとした出来事で観客の感情を大きく揺さぶることのできる話を作るのはなかなか難しいだろう。こういったことを見抜く前谷の慧眼も去ることながら、「睾丸が上がったり下がったり」という表現も凄いと思った。このまんが寄席は四十年以上前に書かれ、前谷も三十年以上前に亡くなっている。大正生まれの人にとってはごく普通の表現かもしれないが、現代人にとって、この表現はなかなかできない。

 そもそも「金玉$${^{*6}}$$」や「睾丸$${^{*7}}$$」が縮み上がると言う感覚を全世界の人口のおよそ半分を占める女性はどのように解釈するのだろうか。かなり昔、男女数人で酒を飲みに行った帰り、ビルの下りエレベーターに皆で乗り込んだ。エレベーターが動き出した瞬間、男仲間の一人が素っ頓狂な声で「スゥーッ」と叫んだ。居合わせた男仲間は全員大爆笑したが、女性陣はキョトンとしていた。あとで女性陣に「金玉は敏感な加速度センサ$${^{*8}}$$」であるという説明をしたが、ピンと来ない様子であった。

 当然、恐怖により金玉が縮み上がったり、安堵によって垂れ下がることなど若い女性は想像もつかないであろう。なのに前谷はこんな表現を使っている。落語は男が聞くもの、もしくは長年の経験を積んだ女性が聞くもの、という認識だったのだろうか。

*1 マンガショップ: ロボット三等兵【上】 maetani.jpg
*2 雑記草商店
*3 マンガショップ: ロボット三等兵【上】 9784775911778.pdf
*4 第167話落語「宿屋の仇討ち」(やどやのあだうち)
*5 20010816 金玉
*6 20030318 似ている植物
*7 20010802 鼻血をとめる妙法
*8 加速度センサ - 日経エレクトロニクス - Tech-On!

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