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20070126 ヨードチンキに溶ける金

 金はヨードチンキ$${^{*1}}$$に溶けるらしい。初めて聞いた。金は反応し難い$${^{*2}}$$。いつまでも変化せずに輝いている$${^{*3}}$$から、装飾品や貨幣として利用されている。王水と言う強力な酸化力を持った酸$${^{*4}}$$に溶けるぐらいで、大抵の薬品には溶けないと思っていた。それが身の回りにある消毒液で溶けてしまうというのだ。これは驚かずにいられない。

 金がヨードチンキに溶けると言うことはいつ頃から知られているのだろう。1990年頃から$${^{*5}}$$らしい。しかもヨードチンキを温めればよく溶け、冷やすと金が出てくる$${^{*6}}$$ようだ。何らかの溶液に溶かした場合、大抵の金属においてこのような器用なことはできない。例えば熱濃硫酸に銅を溶かした$${^{*7}}$$後、溶液を冷ましても銅が金属として析出することはない。温度を下げると金が金属として析出されるのは、ミョウバン等をお湯に沢山溶かした後、溶液を冷やすとミョウバンが器の底に溜る現象$${^{*8}}$$と似ている。

 なぜ金がヨードチンキに溶けるのか。王水に溶ける理由は何となく判る。王水には強力な酸化作用がある。酸化とは原子から電子を奪い取る反応である。金原子からは電子が抜け難いので反応し難い$${^{*9}}$$と言える。王水は金原子から電子を奪い取り、更に金原子が電子を奪われてできた金イオン$${^{*10}}$$は、王水中の塩化物によって錯イオン$${^{*11}}$$となり溶液に溶け込んだ状態となる。

 ヨードチンキでの反応$${^{*12}}$$はどうなのか。ヨードチンキにはヨウ素が含まれている。ヨウ素は塩素と化学的性質がよく似ているので一括りにしてハロゲン$${^{*13}}$$と呼ばれている。金イオンはヨウ素で王水と同じ様に錯イオンができる$${^{*14}}$$らしい。では、ヨードチンキの中でどのように金が酸化されるのだろう。ヨードチンキは王水に匹敵する酸化力があるということか。

*1 ヨードチンキ
*2 JOGMEC独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構 データ集
*3 20010810 金の延べ板
*4 楽しい高校化学(第4章-第6講) 4-6 金属の単体と金属イオン
*5 高Au/Ag比金鉱石・砂金へのハロゲンを用いた有機溶媒精錬法適用の試み -含金廃石再利用及び脱・水銀アマルガム法スモールスケールマイニングを目指して-
*6 可逆的な金の溶解・析出
*7 楽しい高校化学(第4章-第2講) 4-2 気体発生の主な反応原理
*8 ミョウバン飽和水溶液からの結晶製作と教育実践 -二槽式結晶育成装置による巨大結晶の成長観察-
*9 イオン化傾向
*10 Q. 王水は金や白金を溶かすほど強力なのに,ガラス製の容器が溶けないのはなぜなのでしょう?
*11 楽しい高校化学(第4章-第6講) 4-6 金属の単体と金属イオン
*12 ふしぎの国のかがくEXPO :: ヨードチンキで金を溶かそう
*13 ハロゲン | 学習百科事典 | 学研キッズネット
*14 11 ヨードチンキとビタミンCで金メッキ

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