20030913 雷
雷は落ちるのか昇るのか。私がよく訪問する掲示板$${^{*1}}$$で、これが話題になった。
雷雲の底から先駆放電が伸びて地表に達し、その次に地表から地表から雷雲に向かって帰還雷撃という放電が発生するという説明$${^{*2}}$$があった。地表から雷雲に「電流」が流れているならば「落雷」ではなく「昇雷」ではないか。ところが「電流」と「電子」との流れは逆なので、電子の流れからすれば雷雲から地表に向かっている。やはり「落雷」である。果たしてどっちと考えるべきか、という疑問だった。
掲示板でこの疑問に対して答える書き込みはなかった。書き込もうと思ったが、この時は考えがまとまらなかった。
考えがまとまったのでここに書く。雷は多くの場合「落ちる」でいいだろう。
普通の雷は、稲妻を見れば判る通り、上から下に向かって枝分かれして見える$${^{*3}}$$。下から上に向かって「落ちる」のであればこんな形にならない。これだけの考察でも、雷は「落ちる」ことになる。
もう少し考えてみる。雷の正体は電気である。これはフランクリン$${^{*4}}$$が言い出した。フランクリンも雷は当然の如く「落ちる」と考えていたに違いない。フランクリンは凧のひもに鍵を付けて$${^{*5}}$$、これにライデン瓶$${^{*6}}$$を近づけて電気を採取した。念のために書くが、ライデン瓶$${^{*7}}$$の「ライデン」は「雷電$${^{*8}}$$」ではない。18世紀にオランダのLeiden大学で作られた静電気を溜める瓶$${^{*9}}$$のことである。
フランクリンが雷の実験を行った頃、まだ電子の存在は知られてなかった。更にフランクリンは電気の素には一種類しかなく、電気の素が多い状態を「プラス」、少ない状態を「マイナス」と考えていた$${^{*10}}$$。彼は、雷雲から「電気の素」が凧糸を通じて流れ、鍵を通してライデン瓶に溜まると考えたからあのような実験を行った訳である。
現在、電気の素の種類はマイナスとプラスとの二種類であることが判っている。代表的な電気の素$${^{*11}}$$は電子と原子核$${^{*12}}$$である。電子は原子核に較べて非常に小さくて軽いので、電気の担い手は多くの場合「電子」である。一般の電流は電子の流れであるが、電子は「マイナス」なので$${^{*13}}$$、電流を「プラスの電気の素の流れ」と考えた時、電子の流れは電流と反対になる。
通常の雷は雷雲の底に溜まったマイナスから地表に向かって電子の流れが発生する現象$${^{*14}}$$なので、昔から人々が想像していた通りに雲から雷が「落ちてくる」ことになる。ただし電流の方向としては電子の流れと逆なので、電流は地表から雷雲に「昇っている」ことになる。
電流の方向は単なる定義の問題である。実体である電子は雷雲から地表に流れているのでやはり「雷は落ちる」と考えるべきであろう。
*1 A PORN WRITER'S DEN 雑学BBS
*2 未知の部分もある雷のメカニズム
*3 NTTファシリティーズ:商品・サービス 雷害対策/雷サージプロテクタ
*4 20030430 電気のプラスマイナス(2)
*5 Kite Experiment – Benjamin Franklin Historical Society
*6 20020923 電池とバッテリーとの関係
*7 Static Electricity Leiden Jar
*8 しなの鉄道 沿線ガイド 滋野
*9 愛媛総合科学博物館 ●ライデン瓶って?
*10 20010404 電流と電子
*11 キッズサイエンティスト 秩序あるクォーク・レプトンの世界
*12 キッズサイエンティスト 原子核の世界
*13 20030429 電気のプラスマイナス
*14 ANKOSHA:雷(ハード&ソフト)/雷とは何か