20090630 合字
日本語の文字に合字はあるか。合字$${^{*1}}$$は、西洋語の表記で用いられるローマ字で時々見られる。A+E→Æ、a+e→æ(nævus:痣[あざ])、O+E → Œ、o+e → œ(œuf 卵$${^{*2}}$$)はフランス語、ſ(fに非ず)+s → ß(Kuß:接吻)はドイツ語で見られる。古い英語で使われたþはt+hの合字だと思っていたが、そうではなかった。ルーン文字$${^{*3}}$$で英語で言うところの「th(発音はθ)」を表す文字だから文字を合わせたとは言えない。ただ、tとhとの二文字を一字で表すので広義の合字とも考えられる。
合字の定義を「複数の文字要素で構成された文字$${^{*4}}$$」とするなら漢字の殆どがこれに当てはまりそうだ。もう少し意味を狭めて、辞書通りに「複数の文字を合成して作った文字$${^{*5}}$$」とすると日本語の合字はかなり限られてくる。漢字二文字ならば「麿」「粂」「杢」「袰」「褜」ぐらいしか見当たらない。これらは本来「麻呂」「久米」「木工」「母衣(ほろ)$${^{*6}}$$」「胞衣(えな)$${^{*7}}$$」と漢字二字で書くところを一字に合成している。
匁(もんめ)は「文+メ」の合字らしい。以前の記事で「文+め$${^{*8}}$$」と書いた。片仮名の「メ」と平仮名の「め」とを間違えた訳ではなく、何かの文献で「文+め」と言うのを読んだからである。「文+め」でもおかしくはないと思う。一方で、この字は和製漢字でもなんでもなく、れっきとした漢字$${^{*9}}$$であるという説もある。
仮名の合字もある。よ+り→ゟ、こ+と、ト+キ、ト+モ$${^{*10}}$$などがある。
*1 20000606 thとy
*2 20040731 テニスの得点(2)
*3 ルーン文字の起源
*4 20051216 複雑な漢字(5)
*5 ごうじ がふ 0 【合字】の意味 国語辞典 - goo辞書
*6 ほろ 1 【 ▽ 母 ▽ 衣】の意味 国語辞典 - goo辞書
*7 えな 0 1 【〈胞衣〉】の意味 国語辞典 - goo辞書
*8 19991101 新しい漢字
*9 三矢重松「宛字」
*10 Koin変体仮名