20060531 燃費道(3)
自動車の燃費$${^{*0}}$$は走り方で変わってくる。加速する場合、できるだけ速く所望の速度までもっていった方がいいか、それともゆっくりと加速した方がいいか。知人の間で少し話題になった。大方の意見は、できるだけ速く、走ろうとする速度にした方が燃費が浮くのではないか、つまりバアッと加速した方がトロトロと加速するよりも全体で考えれば燃料を節約できるのではないか、であった。
単純にするためタイヤと地面との摩擦、車体内の各部分の摩擦などはないと考える。自動車が静止状態から一定の速度で走ると言うことは、自動車自身が運動エネルギーを持ったと言うことである。その運動エネルギーはエンジンが回転して作る。エンジンはガソリンや軽油で動く。ということは一定速度で走っている自動車の運動エネルギーはガソリンを消費して得られたのだから、加速の方法と燃費とは直結していることになる。
一方、空気抵抗は速度の自乗に比例して大きくなる$${^{*1}}$$。一定の速度が遅ければ遅いほど自動車にかかり続ける抵抗が小さいので燃料の消費量が少なくなるが、目的地到達までの時間が長くなり走行時間が増えるので、それだけ燃料が要る。速度が倍なら抵抗は4倍になるが、走行時間は半分なので目的地までに必要な空気抵抗に打ち勝つための分に使う燃料は2倍で済む。
空気抵抗がなくて同じ一定速度に落ち着くのなら、どういう加速方法を使っても同じ筈だ。最終的に同じ一定速度になるのならば、バアッと加速しようがトロトロと加速しようが、自動車の運動エネルギーはどちらの場合も同じなので、それまでに投入したエネルギーも同じになる。つまり使った燃料も同じになる。
実際は違う。ガソリンエンジンやディーゼルエンジンは気筒内で燃料を燃焼させてその燃焼した時に発生する燃焼気体の膨張の力を利用して回転力を作る。この回転力をトルク$${^{*2}}$$と呼んでいる。回転数によって気筒の大きさや燃料の成分が変わるわけではないから取り出せる力も基本的には大きく変わらない。ただ、エンジンの仕組みなど様々な制約によって回転する力が最も大きくなる回転数$${^{*3}}$$がある。この回転数を使って加速すれば一番効率がよいはずだ。回転数が一定なら自動車の速度は一定なのでこの回転数「付近」ということになる。速度を大きく変えるためには変速機$${^{*4}}$$を使う。
「バアッと加速」「トロトロと加速」のどちらかではなく適切な加速があるということになる。敢えてどちらかと言えばどちらになるだろう。最大トルクが発生する回転数よりも高回転の時のトルクが低回転の時よりも小さければ$${^{*5}}$$「トロトロと加速」の方がいいし、その逆なら「ばあっと加速」の方がよさそうだ。ただ、回転数を上げると燃焼気体の温度を下げるために余分に燃料を噴射$${^{*6}}$$することがある。これは運動エネルギーに全く関係のない燃料消費である。ということはゆっくり加速$${^{*7}}$$した方が省燃費になりやすいと言える。
物体の運動の慣性にかかわる燃料消費の他に空気抵抗の問題が残っている。先述したように空気抵抗は速度の自乗に比例するので、速度が遅ければ遅いほど、空気抵抗に関わる燃料消費は少なくなる。速度が遅いと走行時間が長くなるが、その長くなり方は抵抗の減り方よりも緩慢なので、積算すれば燃料消費が少なくなる。
目的地到達までの時間を無視して「バアッと加速」「トロトロと加速」だけを比較するなら、やはりゆっくり加速した方が省燃費になる。
*0 20040517 燃費道(2)
*1 省燃費運転マニュアル(基礎知識編) | いすゞ自動車
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