見出し画像

20030715 リンクの制限(2)

 あるサイトで、フレーム$${^{*1}}$$で構成されたページの一部のみを表示させるのは権利の侵害になる可能性があると書いてあった。

 非常に気になる記述である。雑記草ではこういったリンク$${^{*2}}$$の仕方をしょっちゅうしている。

 権利の侵害になる根拠は「同一性保持権$${^{*3}}$$」だろう。同一性保持権$${^{*4}}$$とは「著作者は、その著作物及びその題号の同一性を保持する権利を有し、その意に反してこれらの変更、切除その他の改変を受けないものとする」権利であって、とにかく著作物を作った人にはその著作物を思った通りにしておく権利があるということである。

 web上のサイトを製作した人はフレームの構成も含めて一つの著作物と考えているので、そのフレームの一部のみを表示する行為は制作者の「同一性保持権」を侵しているということになる、という考え方である。

 検索サイトではフレームの要素それぞれが検索によって抽出されてしまうので、上の考え方で行けば全ての検索サイトは「同一性保持権」を侵していることになる。しかし検索サイトのこういった機能を制限すると、著作権法の目的$${^{*5}}$$である「文化的所産の公正な利用に留意しつつ、著作者等の権利の保護を図り、もつて文化の発展に寄与する」ことを阻害する可能性がある。様々な著作物の存在を知る機会を逸する虞が出てくる。

 そういったリンクが駄目ならばリンクをしないで、URLだけを表示すれば問題がないのだろうか。少なくとも検索サイト側には問題は発生しない。フレームの一部のURLを文字だけ使って表示するのだから何ら問題はない。検索を実行した第三者がその検索エンジンで知り得たフレーム構成の一部分のURLを自分のパソコンに打ち込んで、それを表示させる。この行為の場合はフレームの一部だけを表示するのだから前述の考え方からすれば「同一性保持権」を侵しているに他ならない。

 これを著作権法によって制限するのは不可能であろう。もともと不可能なことを議論するのは無意味である。可能としてもこの制限がどのように文化の発展に寄与するのか判らない。これを前提として受け入れることが出来るのであれば、文字で表示されたURLを改めて打ち込む行為を自動化すること即ちリンクすることも何ら問題はないと理解出来るはずである。

 それにしてもリンクの申し出を要請する文言は道義的にはともかく法律的には意味のないものと考えて差し支えない$${^{*6}}$$と書いているのに拘わらず、リンクの申請ページ$${^{*7}}$$のある著作権関連機関のサイト$${^{*8}}$$がweb上に存在するというお粗末な状況は、インターネット関連の著作権はまだまだ議論の余地がまだまだ多いと言うことの証左だろう。

*1 HotWired Japan : Webmonkey : html : フレームは「ピクニック」みたいなもの
*2 20021117 リンクの制限
*3 はじめての著作権講座
*4 第二十条 同一性保持権
*5 おバカのための著作権 その1~著作権の目的
*6 マルチメディアと著作権
*7 CRICへのリンク登録フォーム
*8 社団法人 著作権情報センター

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?