20020726 一秒と1メートル
一秒という時間の長さはどのように決められたのか。「秒」という考えは元々は日本にはなかった。「セカンド」の訳語として「秒」$${^{*1}}$$という時間を表す言葉が作られた。セカンドというのは「第2の分割」という意味である。minuteは細かく分けるという意味で時hourを60分割したのが分minute、それを更に60分割して第2secondの分割minuteが「second」となった。
一秒の長さが一分の長さの1/60になったのは一分が一時間の1/60ということからすれば、ごく自然な成り行きだろう。従って一秒の長さは地球の自転の速度、一日の長さから出来上がった単位で、何か他の事象から決めた長さではない。現在は自然科学に用いられる単位として普遍性を持たせるために原子の固有振動数から一秒の長さを定義$${^{*2}}$$している。この原子の時間の長さは地球の自転とは因果関係が全くない。地球の自転の「一秒」の長さに原子の一秒の定義を合わせているだけである。
長さが1mの振り子の周期はほぼ2秒$${^{*3}}$$である。振り子の周期というのは錘が元の位置まで戻ってくる時間なので、例えばそれが右から左に振れる時間であれば1秒となる。「1m」と「一秒」とは偶然なのだろうか。
メートルという長さの単位はフランスで作られた。メートルの定義を振り子の長さで定義$${^{*4}}$$しようとした。言い出したのはフランスの政治家タレーラン$${^{*5}}$$であった。振り子の周期は地球上の位置によって違うことは当時から知られていたので、タレーラン$${^{*6}}$$は北緯45°で周期が2秒となる振り子の長さ$${^{*7}}$$をもって長さの単位にすることを提案$${^{*8}}$$した。しかしこれは採択されずに、周期が2秒となる振り子の長さ$${^{*9}}$$を元に割り出されたと思われる子午線の北極から赤道までの1/1000万の長さが長さの単位として採択された。
不思議なのはすべて切りのいい数字であったことである。長さ1mの振り子の半周期の時間の長さは1秒であること。地球の子午線の1/1000万の長さが振り子の長さと同じであること。
振り子の周期は何で決まるのか。振り子の長さと重力加速度$${^{*10}}$$とである。重力加速度は何で決まるか。これは地球の質量と地球の大きさとである。
一秒は地球の自転の速さから導き出された。地球の自転は何で決まったか。地球の質量と大きさとが関わっているだろう。しかし自転の速さには必然性はない。自然の摂理か何かで太陽系が出来上がった時に最初に回転エネルギーを与えられて$${^{*11}}$$それがずっと保たれているだけである。色々な理由で実際には自転速度が遅くなっているが、人類の歴史が始まってからはそれ程変わってないだろう。この回転速度と「一秒の長さの決め方」には相関関係はない。最初から一回転が12時間でも同じように「一秒」を定義できる。
もし地球の自転の速度が今の2倍の速さだとどうなったか。一秒の長さも当然今の半分になるだろう。すると半周期が1秒の振り子の長さはどうなるのだろうか。振り子の周期の長さは振り子の長さの平方根に比例する。これは地球の回転の仕方に影響されない。実際には自転による遠心力と万有引力との合成が重力加速度なので影響するが、遠心力は小さいので無視$${^{*12}}$$する。すると振り子の長さは1/4になる。従って「1m」は子午線の1/4000万となったかもしれない。
つまり1mが「子午線の1/1000万」と言う、切りのいい数字になったのは単なる偶然なのである。そして「子午線の1/1000万」の長さのほぼ3億倍は光が一秒間に進む距離$${^{*13}}$$である。
これらは本当に偶然$${^{*14}}$$なのだろうか。何か見落としてはいないだろうか。
今日から雑記草は4年目に入った。
*1 20000731 秒
*2 時間
*3 以前、NHK教育の番組「マテマテカ」で、1秒の定義は長さ1メートルの振り子の周期に関連しているようなことを言っていました。
*4 【メートルとインチ】
*5 CHARLES MAURICE de TALLEYRAND - PERIGORD
*6 Association "Les Amis de Talleyrand"
*7 meter
*8 フランスが中心となって制定されたメートル法条約に日本が加入した日(1885)
*9 Chronological History of the Metric System
*10 振り子の周期は長さに依存しないか
*11 地球回転と環境変動
*12 重力
*13 20000115 1メートル
*14 19991116 偶然の本質