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20020817 影

 「影(かげ)$${^{*1}}$$」という言葉には様々な意味がある。

 一番よく用いられるのは光が当たったときその光が遮られて黒く見える部分、と言う意味であろう。現代の日本語を学ぶ上でもこの意味を最初に憶える。その他に「噂をすれば影」のように実際に光が当たって影が出来ているのではなく「姿」という意味がある。漫画やテレビジョンドラマでは実際に影を作って登場させる場合もある。「影武者$${^{*2}}$$」のように「身代わり」という意味もある。「死の影」というように見えない物や人を暗示する場合もある。

 上の用法では、本体があって、そうではないその「写し」みたいな物、という大まかな意味がある。しかし「影」にはこれとは全く違う意味もある。「光」という意味がある。「星影$${^{*3}}$$(ほしかげ)」とか「月影(つきかげ)」とか、という使い方がある。「光」と「影」とは完全に対立する言葉として使われる場合もあれば、同じ意味として使われる場合もあるわけである。同じ言葉なのに全く反対の意味を表すというのは面白い。

 英語でも「影」のような名詞ではないが「cool$${^{*4}}$$」や「bad$${^{*5}}$$」など全く逆の意味に使っている。しかしこれは俗語なのでちゃんとした用法ではない。

 「影」と言えば「仮面の忍者赤影(飛騨の赤影)$${^{*6}}$$」である。さてこの「赤影」の「影」はどちらの意味であろう。「光あるところに影がある$${^{*7}}$$」の忍者だから光が遮られて出来る黒い「影」のことだろうか。しかしその「影」は昔から黒に決まっている。黒い「影」が「赤」「青」「白」「紅」という発想は可能だろうか。「影」を「光」と解すれば容易に考えつく。「黒影」という名の忍者も登場するので、もしかしたら本当に「影」を「光」としているのかもしれない。

 原作者の横山光輝$${^{*8}}$$は、まず「仮面の忍者」を創造し、前作である「伊賀の影丸$${^{*9}}$$」の「影」を受け継いで赤い「影」を思いついたのではないだろうか。影丸の「影」は当然、光の対極としての「影」である。そうなると赤影$${^{*10}}$$の「影」を「光」と解してはいけないことになる。

*1 影(エイ)の意味や使い方 Weblio辞書
*2 黒澤明の世界
*3 星影のワルツ
*4 cool. The American Heritage® Dictionary of the English Language: Fourth Edition. 2000.
*5 bad 1. The American Heritage® Dictionary of the English Language: Fourth Edition. 2000.
*6 仮面の忍者赤影
*7 [懐かしアニメ] サスケ~少年忍者サスケの戦い:後半~(BRV2枚組/送料サービス)
*8 横山光輝の世界~書籍バベルの塔手に入れました・・・~
*9 伊賀の影丸
*10 60年代のテレビ 仮面の忍者・赤影

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