20050911 内田秀男博士
日本で独自にトランジスタを発明した$${^{*1}}$$と一部の人々の間で信じられている内田秀男博士に関する記述がインターネット百科事典の「Wikipedia」に掲載されている$${^{*2}}$$。
その中にトランジスタ発明の記述とともに
テレビに白い斑点が出現することから、アメリカの原子爆弾が新型爆弾であったことをいち早く発表したことでも有名。しかし、この時も旧日本陸軍により、「士気の低下につながる」として発表に制限を受けた。
とある。戦後に放送が始まったテレビジョン$${^{*3}}$$が何故戦時中にあるのかと思ったが、内田博士はNHK放送技術研究所に勤めていたので博士にとってテレビジョンは当たり前の存在だったはずだろう。NHK放送技術研究所は1930年頃からテレビジョンの研究を始めている$${^{*4}}$$。そもそもこの研究所はテレビジョン放送研究のために設立$${^{*5}}$$された。
日本で原子爆弾$${^{*6}}$$が炸裂したのは二回しかないので、この二回でそういった現象に気付くというのは非常に高い洞察力の持ち主であったに違いない。「トランジスタを発明した」と思われても不思議ではない。それにしてもどうやって気付いたのだろうか。
広島で原子爆弾が初めて炸裂した時$${^{*7}}$$、東京の世田谷にあった研究所で行われていたテレビジョン放送実験画面に「白い斑点」が出現したのかもしれない。いくら洞察力があっても、「白い斑点」が現れた時に日本のどこかで原爆が炸裂したと直観するのは不可能だろう。アメリカ軍が原子爆弾を日本に投下するという予測は一般的にはなされていなかったし、爆弾の炸裂時に強力な電磁波が発生する事なども解るはずがない。当時すぐに新聞などで$${^{*8}}$$広島の原爆投下後に投下された爆弾は「新型爆弾」と言うことが伝えられ、それによってテレビジョン画面に現れた「白い斑点」は新型爆弾と何らかの関係があるということに気付いたのだろう。二回目の長崎の時には確信を得たのかも知れない。因みに広島の原爆投下後$${^{*9}}$$に米軍は飛行機から強力な新型爆弾を更に投下することを予告するビラ$${^{*10}}$$を撒いている。これで新型爆弾であることを知った可能性もある。
そうすると「テレビに白い斑点が出現することから、アメリカの原子爆弾が新型爆弾であったことをいち早く発表した」という文は矛盾だらけだ。「原子爆弾だから白い斑点が出る」のであって、「白い斑点が出るから原子爆弾」ではない。強い電磁波が原因と思われる画面上の白い斑点で新型爆弾の存在を推定することはできない。それに「アメリカの原子爆弾が新型爆弾であった」というのもおかしな表現である。広島で人類史上初めて人間の頭上で原子爆弾が炸裂したのだから「原子爆弾は新型爆弾」に決まっている。
敢えて書き直すなら「テレビに白い斑点が出現することから、アメリカの新型爆弾である原子爆弾には今までの爆弾にない効果がある」となる。しかし本当に内田博士はこういった内容の事を発表しようとしたのだろうか。どうもよく判らない。
*1 20050910 トランジスタの発明(2)
*2 内田秀男 - Wikipedia
*3 テレビは進化する(テレビ放送開始)
*4 テレビは進化する(日本のテレビの父)
*5 テレビは進化する(技研設立)
*6 20010524 模擬原爆
*7 長崎新聞 あの日あの時 被爆60年
*8 ヒロシマ新聞 新型爆弾、広島壊滅 五万人以上が死亡
*9 長崎新聞 59年目の検証 原爆戦災誌改訂へ 宣伝単(下)
*10 長崎新聞 59年目の検証 原爆戦災誌改訂へ 宣伝単(上)
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