#78 Next stage
次の場所に行かなきゃいけない。胸の真ん中で燃え滾っているそんな決意は湧き上がっては簡単に折れている、最近。
日々の暮らし、日々の仕事に押しつぶされて消えていく時間はとんでもなく儚く、もっと力を使いたい夢への努力が外野に追いやられていく。今日だってもう疲れてへとへと。重力深く沈んでいくようにのしかかっているこの疲れが、完全に癒えたり消えてくれることはな決意をむしばんでいく。自分のふがいなさに泣きながらもベッドで動けず淀むいくつもの夜。涙が乾いたころに眠ったかと思えば、夜は短くすぐに朝が来てしまう。
繰り返される決められた言葉と音、窓のない職場はパーテーションが逃げ場を無くし要塞のようである。人と顔を突き合わせてお酒を呑み、美味しいご飯を突っついて力を貰っていた私には酷な日々が続いている。それでも少しずつ出来ることを増やさなくてはと、いい加減さを磨き続けてオーバーな言葉や理不尽な注意に耳を塞ぎ、閉口するのが上手くなってきた。
こうやってまともに生きて、嵐の前にはコスモスを摘みたい。三上と阿部のように。
最近春のミモザ、第一弾を買った。街頭の片隅で少しずつ乾いていた小さな黄色い花。今はふわふわと家の窓辺で揺れている。
星野源が「創造」という新曲を発表し、「何か創り出そうぜ 非常識な提案 誰も見ない 場所から一筋の未知を創り出そうぜ」と歌う。いつだって、群衆から躍り出る「特別な者」は何かを創造している。「独創」している。そして独創ほど険しく苦しいものはない。誰も助けてくれない、一から百に至るまでのすべてを「独りで」「創る」からこそ、その人は特別になり得たのだろう。
毎日満員電車に揺られ、職場で自我を限界まで殺し、契約の時間を何とか乗り切って家に帰る日々を繰り返していると、どんどんその「創造」の種は小さくカラカラに乾いていく。単調で刺激が無いことは脳をみるみる硬化する。澱むこの世が更に澱みを増していく。
だからイヤホンを流れる音楽にすがっている。創り出すための潤いを求めて、鼓膜を揺らす重低音をとにかくなぞる。
社会人が夢を追うのは本当に難しい。絶対に難しいよ。圧倒的に時間を吸い取っていく仕事の存在、壁。。。身体がへとへと過ぎてマジで温泉行きたい、求むジャグジー...。
私の推しているグループはリーダーが所属事務所の社長も兼務しているのだけど、彼の口癖が「一生懸命はみんなやる。上手くやろう」だ。完璧主義者を彼に見るのだけど、一方でその言葉に深く頷く自分もいる。「上手くやらなきゃ」と自分を追い込む彼だからこそ、パフォーマンスの精巧さは増すばかりで、でもいつも苦しそうで、向かっていく場所を見ている感覚になる。自分を責め立ててようやく進める栄光への一本道。
次のステージに行こう。弱音を甘んじて受け入れ、許し続けるばかりじゃ停滞したままだ。停滞が一番自分を追い込むこと、よく分かっているから、変わっていこう。
来月には前みたいに食事を共に取ろう。深い話をしよう。それまで独りで創るよ。
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