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遅い傷心旅行

 電車を乗り継いで5時間、兵庫県神戸市に辿り着いた。

 元カノと初めて行った旅の場所、私の人生で初めて女の子と旅をした思い出の場所である。
今回はその旅の手記である。

 本当は彼女と過ごしたホテルに泊まりたかったものの、同じ部屋で1人2泊で6万円と社会人1年目の給与感覚ではあまりにも高すぎた為、前回友人と神戸に行った際に使ったホテルに泊まることにした。そこに荷物を置いて思い出の場所を巡る旅をスタートした。想うだけきちんと想って自分の想いをきちんと清算して前を向く。これがこの度の主旨である。泣きたいなら好きに泣いていい。そんな3日間にすると決めた。
 人によっては付き合ってた人のことをすぐに忘れる人も多いという。しかしながら大学の思い出はなんですかと聞かれたら真っ先に彼女との日々と即答できるぐらい濃密な時間を過ごしたからこそ別れて数ヶ月経っても忘れられない。多分彼女以上の人にもう出会わないんだろうなぁと思える素敵な人であった。(勿論、嫌な部分もあったしたまに思い出すとムッとしてしまう。でも、私も彼女に対して嫌なことをしてしまっていたからお互い様なんだろうな)宝くじで一等賞を当てたような美人で素敵な子であった。

 明石天文台に来た。時間もほぼほぼ同じかそれより少し早いぐらい。当時の私は彼女が本気で楽しそうにしてくれれば幸せだったので行きたいところは特になくて彼女が行ってみたい場所に行った。過去と同じくプラネタリウムを見た。でも、同じ場所に座ったはずなのに左側には彼女は居なく空席であった。それがなんか嫌で自分のボディバッグを置いておいた。前回行った時のプログラムは南洋諸島の星座にまつわる話であった(具体的にどこかは覚えていないけどソロモン諸島やガ島の話を彼女にしてたのを思い出したから南洋諸島のどこかであるのは確実だ。)今回は源氏物語の話であったが、連日の仕事の疲れや酷暑の中移動したからか疲れてしまって寝てしまった。横に彼女が居た気がしたが起きたらやはり居なかった。悲しくなって真っ暗なプラネタリウムで声を押し殺して静かに涙した。久しぶりに泣いた。というか、泣けた。プラネタリウム終わった後は展示を見て展望台へ行った。青々とした空と海に明石海峡大橋が変わらず綺麗であって椅子に腰掛けてしばらく眺めていた。

 インスタグラムのアーカイブにある彼女との神戸旅行の投稿。消せずに残っており同じ写真を何枚か取ろうと決めた。天文科学館前の水時計の前で写真を撮ってもそこにはあの子は居ない。分かっているけど何枚も撮ってしまう。また涙が溢れてきてサングラスで目元を隠して神戸に戻るために駅に向かった。本当にあの子の事好きだったんだなぁ。あの子はモテていたようで(現在進行形でもそうだと思う)色んな経験をしていたと思うけど、たくさんの初めての経験をあの子から貰った。あの子は俺のことなんか忘れて今を生きていると思う。だけど私はあの子の事を忘れられないと思う。

 あの子は私と違って能力がある。私は一介のサラリーマンで誰にでもできるような仕事をしている。念願の会社に入ったのに私が首を括って自殺したとしても代わりの人ができるような仕事をしていることを知って馬鹿馬鹿しいなと感じるようになった。そのしんどさであったり、人とかとあまりコミュニケーションを取らないから悩みも相談できずにクサクサしている私であるが、どうかあの子にはこっち側に来てほしくない。あの子にしかできない高い能力があるのだから如何なく発揮して世のため人のためになるようなことをし続けて欲しい。私はあの子がそれをできることを知っているしそうであることを信じている。私がいることであの子の選択肢や視野を狭めるならそれはそれで嫌だ。だからカミサマの悪戯で再び出会うことがあっても心を鬼にして近づくなと言ってしまうだろう。じゃないと会ってしまったら泣いてしまうしあの子の進むスピードを遅めてしまうだろう。

 今回の旅で執着をなくして私も私の道を前向きに進めたらなと思う。どんなに祈っても願っても会えないし会わないから。あと2日、ゆっくりと幻影を探すように思い出を振り返って自分があの子に対する想いをきちんと昇華して前に進めたらなと思う。

余談

 ホテルにチェックインしたら男1女1で予約になっててびっくりした。私、男1で予約してたし、予約アプリ画面見ても1人で間違いないのにだ。ダブルベッドでも大分持て余すから元カノと泊まったホテルはキングサイズだったから予算オーバーして無理して泊まっても余計に寂しい思いをしたのは違いない。


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