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街が緑に染まる日・ダブリン

今日3月17日はセントパトリックデー(St.Patrick's Day)である。
アイルランドの聖人・聖パトリックの命日であるこの日、その首都は緑色に染まる。
今回は、そんなセントパトリックデーに沸くダブリンを取り上げたい。

ダブリンはこんな街

ダブリン(Dublin)はアイルランド島東部に位置するアイルランドの首都であり、人口約120万人と同国最大の都市である。

有史以前よりこの地域に人が定住していたことが明らかになっているが、本格的に街としての歴史が始まるのは、10世紀にヴァイキングの居住地として設立された頃にさかのぼる。
その後、アイルランド人によるヴァイキングとの戦いや、イングランドの侵攻・支配の歴史の中、羊毛貿易や各種工業で栄え、街は大きく発展する。

アイルランド独立戦争で街も大きく破壊されたものの、その後再建され、独立したアイルランドの首都として政治・経済・文化の中心敵役割を担っている。

緑に染まる街

私がダブリンに到着したのは前日3月16日だった。
年に一度の祝祭を翌日に控えた街は、どこも緑色そしてアイルランド国旗のトリコロールカラーであるオレンジと白に彩られていた。

なぜアイルランドのナショナルカラーは緑なのか。
それにも聖パトリックが関係している。
聖パトリックはアイルランドにキリスト教を布教した人物であるが、彼がキリスト教の教えである三位一体を説くためにシャムロック(クローバーなど三つ葉の草の総称)を用いたと言われており、シャムロックはアイルランドのシンボルマーク的な存在となっていく。

その後、イギリスによってアイルランド軍の軍服にシャムロックをつけることが禁止されたことに端を発し、シャムロックの「色」である緑を身につけることがアイルランド人の抵抗の証と考えられるようになり、アイルランド独立運動の活性化に伴って徐々にアイルランドを象徴する色となっていったそうだ。
シャムロック、そして緑色はアイルランド人のアイデンティティとも言える歴史があるのだ。

夜になると街には更に活気が増していく。
セント・パトリック大聖堂やシティーホールも当然のように緑色にライトアップされ、

パブが立ち並ぶテンプルバー地区では早くも賑わいを見せていた。

前日でこれなら当日はどうなるのか。期待は膨らむばかりであった。

ダブリン名物・酒と酒

さて、いよいよ日は明けて3月17日、セントパトリックデーである。
午後から始まるパレードを前に、私達一行は朝からアイルランド名物を楽しみに行くことにした。

向かっていると、私が休みだと知らない同僚から電話がかかってきた。
「今日はコーヒーは要らないのか?」という内容だった。
(チーム内で毎日持ち回りでコーヒーを買っていたのだ)
今日私に必要なのはコーヒーではない。
要るのはただ一つ。ギネスだ。

アイルランドを代表する名物の一つといえば黒スタウトビールのギネス(Guinness)だろう。
ダブリンのセント・ジェームズ・ゲート醸造所は、その発祥の地であり、1759年よりギネスが製造されている。
そして醸造所にはセンターが併設されビールづくりについて知ることができるようになっているのだ。

近代的な設備をどんどん登り、最上階にたどり着くと見学は終了だ。

見学後はいよいよお楽しみ、試飲の時間だ。
百聞は一見にしかず。やはり直接味わうのが何よりの学びである。

スタッフの手によって一杯ずつグラスに注がれている。
とはいえ、すぐに飲めるわけではない。
途中サージングと呼ばれる泡を落ち着かせる行程を挟むので、一度待たなければならない。

年に一度の祭りであるこの日は醸造所も大いに賑わっていた。それでもしっかりと時間をかけて最高の一杯を提供してくれるのはさすがのこだわりである。

ようやく完成したギネスをいただく。視界の外にはダブリンの街並みが広がる。何よりまだ午前10時である。なんと素晴らしい贅沢なのだろう。

ところで、アイルランドの酒といえばアイリッシュウイスキーも外すことができない。
ダブリンにはアイリッシュウイスキーを代表する銘柄であるジェイムソンの旧蒸留所がある。

現在では蒸留所の機能はアイルランド第二の都市コーク郊外に移っているが、見学ツアーでウイスキーの製造方法やジェイムソンの歴史などについて学ぶことができる。

そして試飲ではジェイムソンとスコッチ、アメリカンウイスキーの飲み比べができる。
私はこのとき初めてバーボンとの味わいの違いをはっきりと認識した。

祝祭

いよいよパレードの会場へと向かう。

https://stpatricksfestival.ie/media/pages/events/parade/bb958e9b5b-1646926253/parade_route_-_city_guide-a4-2.jpg

これは今年のパレードコースであるが、例年同じコースでダブリンの街をパレードの集団が練り歩く。
我々はゴールに近い聖パトリック大聖堂の近くでパレードを見物することにした。

沿道の人々はみな緑色のなにかを身にまとっている。

オランダの女王誕生日がオレンジ色に染まるのとは対象的だ。

セントパトリックデーには緑色のものを身にまとっていないとつねられてしまう、というルールがあるらしい。
それはアイルランドの伝承に登場するいたずら好きの妖精・レプラコーンが、自分の好きな色である緑色のものを身につけていない人をつねる、という言い伝えから来ているそうだ。

実際につねられるかはさておき、せっかくならばその場に馴染んでより楽しむために緑色のものを身につけて望みたい。
緑色の何かは、そこら中に売られているので特に困ることはないだろう。

華やかな音楽とともに、徐々にパレードが近づいてくる。
先頭は豪華な馬車だ。

先頭でスマホを見るな

どんな要人が乗っているのかと思いきや、何故か乗っていたのはカップだった。市長の馬車ということだったが、なぜカップが乗っていたのかは不明である。

その後もパレードは続く。

楽しそうで何よりだ。
団体ごとに様々な趣向を凝らしているのが面白い。

途中小雨が振り始める生憎の天候となったが、1時間ほどの間入れ代わり立ち代わり現れる様々な団体の行進は見るものを飽きさせず、ボルテージの高い状態が続く。
一方、小雨の中酷使し続けた私のカメラは途中で息絶えた。

パレードが終わっても、街は大盛況である。
アイリッシュパブで祭りの余韻を楽しみながら夜は更けていくのであった。

ダブリンのマグネット

ダブリンのマグネットがこちら。

シャムロックの緑を基調としたマグネットには、テンプルバーや聖パトリック大聖堂などダブリンのランドマークが散りばめられている。

今年はダブリンで2年ぶりにセントパトリックデーのパレードが行われるそうだ。

今すぐは難しくとも、世界が落ち着きを取り戻した暁には、街をあげて国をあげての熱気にあふれる街の一部になりにゆくのも悪くないだろう。


最後までご覧いただきありがとうございました。
次回(こそ)は日本を取り上げようと思います。

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