台湾食べある記 ⑥台北(終)
朝食バイキングには夢がある。
なんだかんだいってもやっぱりある。
それが格式あるホテルならなおのことである。
この日私が宿泊していたのは、台湾を代表するホテル・圓山大飯店(The Grand Hotel)であった。
1952年に海外の要人を迎えることを目的に創設されたこのホテルは、宮殿様式の建築が特徴的であり、異彩を放つホテルだ。
思えば初めて台北を訪れ、バスの車窓からこの建物を見て、大層立派な歴史建築物なのだろうと思ったら、のちにホテルと判明して驚いたものだ。
内部も豪華で、せっかくこのホテルに滞在するなら内部の見物にも十分時間を取ったほうがきっといいだろう。
もともと満室で泊まることは断念していたのだが、帰国便の欠航によって埋まれた追加日程で空室を発見し、勢いで泊まることにしたのである。
最も安い部屋は窓のないエコノミールームだが、せっかくならば台北の街並みを眺めたい。
そう思って一つ上のスーペリアルームを予約した。
案内されたのは別館で、その渡り廊下から期待は高まったが、
窓の外の景色は、
駐車場ビューであった。
何とも言えない気分になったが、まぁ予約できたのが最後の1室だったので、やむを得ないかもしれない。
ホテルのHPによれば同じランクで眺望のいい部屋もあるようだが、運によるところもあるかもしれないので、確実に良い眺望を手に入れたければさらに上のランクの部屋を確保したほうが確実だろう。
眺望は不平等でも朝食は平等だ。
このホテルは市外から離れることもあり、ホテルから歩いて近場の店に行くのは現実的ではなく、ホテル朝食をとることにした。
中華風のレストランでバイキングを楽しむ。
その外見にふさわしく伝統的な台湾料理を中心に豪華なラインナップが堪能できた。
普段ならなかなか食べないフルーツにも舌鼓をうち、悪くない朝のスタートを切ることができた。
さて、台風のおかげで思いがけず得られた延長ラウンド2日間であるが、最終日がほぼ帰るだけのスケジュールとなるので、実質的には今日がいろいろ動き回れる最終日である。
お土産探しを中心に台北の行き残した場所を巡ることにした。
ホテルを後に、再び市内中心部へ赴くと、最初に向かったのは中世紀念堂だ。
蒋介石を記念して1980年に建てられた紀念堂は中央の大階段を上ると巨大な蒋介石の像が出迎えてくれる。
また、中世紀念堂といえばホール内での衛兵交代式が名物であったが、今年の7月15日から廃止され、代わりに屋外での行進に置き換えられたそうだ。
「以前訪れたときは屋内だったのになんで今回は屋外なんだろう?」そう思いながら見物していたが、この記事を書く段になってインターネットでようやく真相にたどり着いた。
名所観光はこのあたりにして、お土産調達の時間である。
再びMRTに乗り込み、ショップが多く並ぶ東門駅近くの永康街に向かった。
このエリアには個性的な雑貨店が多く、量産品ではないお土産を探すのには最適なエリアといえそうだった。
ひとしきり物色をしたら休憩がてらカフェによる。
伝統的なタロイモのスイーツ芋圓(右)と、トラガカントといういわゆる天然のガムを使ったスイーツ(左)を注文した。左は翻訳しても今一つ感じがわからなかったが勢いで注文した。
どちらも優しい味わいで、芋圓はモッチリと、謎の多かったトラガカントは何となくキクラゲに近い食感で楽しむことができた。
その後も少しうろついた後、エリアを変えてバラマキ土産の調達へ。
向かったのは大型スーパーのカルフールだ。
広い店内は食品・日用品から家電に至るまで幅広く取り揃えており、お土産選びにも事欠かない。
また、レストラン街も併設されており、サイゼリヤや
丸亀製麺も出店していた。
かつて30日で31杯を食したほどの丸亀信者としては台湾の味も確認しておきたかったところではあるが、最後の晩餐に備えて胃袋を空けておくことにした。
苦渋の決断で胃に余裕を持たせて向かったのは中心部にほど近い夜市・寧夏夜市だ。
台湾グルメを語る上で夜市の存在を外すことはできない。
いろんな夜市を巡ってそれぞれ異なる特色を楽しむことをお勧めしたいが、
もしどこか1か所だけにしか行けないのであれば、私はこの寧夏夜市を勧めるだろう。
理由の一つは中心地からのアクセスの良さであるが、もう1つはその熱気である。
そこまで広いわけではない通りに店舗と屋台がひしめき合い、そこに多くの人が集う。この活気こそが台湾の夜市だ。そう思わせてくれるだけの雰囲気があった。
最初に目指した店も大行列であった。
列の長さの割には回転はよく、30分ほど並んで入店することができた。
ここ円環辺蚵仔煎は牡蠣オムレツの老舗として人気な店だ。
店頭にはミシュラン認定を示すマークが誇らしげに掲げられている。
早速牡蠣オムレツとハマグリのスープ、そしておこわを注文した。
まずスープとおこわがやってきた。
比較的優しめの味わいが歩き疲れた体に染み渡る。
そしていよいよ牡蠣オムレツの登場である。
卵ももちろん使われているが、片栗粉が主なようでモッチリとした食感に、青菜がいいアクセントになっている。
しかし何といっても牡蠣のゴロゴロ感である。
日本のそれより1つ1つはやや小ぶりな印象を受けるがたっぷりと入っているので満足感が高い。
甘辛いソースとの相性も良く、行列にも納得である。
あまりの人気だからか、その製造システムは極めてシステマティックになっていた。
大きな鉄板でまとめて焼き上げられた牡蠣オムレツは皿に盛られて傍らに置かれる。
そうするとコンベアをたどって配膳係の元へと流れていく。
この効率化が店の回転の良さの秘訣なのだろう。ある程度並ぶことは覚悟だがぜひ訪れてみてほしい。
ある程度腹が満たされたら、屋台のほうをうろつきながらめぼしいグルメを探す。
タロイモ団子に行列ができていたので並んで試してみることにした。
普通の団子と卵でんぶ入りのもの2つあるらしい。
揚げたてを提供してくれるので、熱々のものをいただける。
芋のホクホク感が実によく、美味であった。
冷たいものも食べたくなって、ピーナツアイスクリームロールの店でも足を止める。
飴で固めたピーナッツを鉋のようなもので削ってタロイモのアイスとともにクレープ生地に巻いて提供される。
口コミではパクチーも入っているとのことで、どんな味なのだろうと思っていたが、品切れだったのかパクチーは入っていなかった。
ザクっとしたピーナッツと、甘さ控えめでミルク缶のあるねっとりタロイモアイスの相性が良く、食感も含めて楽しいデザートだ。
パクチー入りも興味はあったが、それがなくても十分正統派においしいデザートと言っていいだろう。
腹は満たされたが、最後の夜が終わっていくのが名残惜しく、
ゲームコーナーなどを眺めながら夜市の余韻を楽しんだ。
本日のマグネット
本日のマグネットがこちら。
山々を背に、大都会台北のランドマークが描かれている。
初めて台湾を訪れた4年前に購入したものだが、この機会のお披露目とすることにしよう。
寝て起きると、いよいよ帰国の途である。
最後に朝食の人気店を訪れて台湾らしいモーニングを楽しむ。
7日目にして、そして朝食でこの度初の小籠包をいただくことができた。
鹹豆漿も含めて安定の美味しさが染みた。
ホテルに戻り、チェックアウトを済ませると空港へ。
締めの牛肉麺をいただくと機上の人になる。
名残惜しい台湾の地ともサヨナラである。
後ろ髪惹かれる気持ちで東京へ。
と思ったが、帰国便キャンセルの影響で、降り立ったのは関西である。
乗り継いで、この日最後の便で今度こそ東京へ。
ようやく家にたどり着いたのは日曜深夜のことであった。
「月曜休みにしておいてよかった。」
飛行機のキャンセルなど予想していたはずもないが、この時ほど自分の休暇取得プランを誇ったことはない。
こうして台湾を満喫する旅は幕を閉じた。
物価や為替の影響もあり、なんでも安いというかつての台湾の優位性はほぼ薄れてしまっている。
しかしそれでも、日本人の舌と心に馴染みのいい台湾は、またすぐにでも訪れたくなる魅力を持ち続けていた。
最後までご覧いただきありがとうございました。