御伽の都・コペンハーゲン
本日のマグネットがこちら。
水辺に建つカラフルな建物と城、そして不名誉な称号を持つ像。
今回の舞台は北欧デンマークの首都・コペンハーゲンである。
コペンハーゲン(Copenhagen/København)は、デンマーク東部のシェラン島に位置する人口約81万人の街である。
デンマークは国土の一部をヨーロッパ大陸・ユトランド半島に持っているものの、島に位置するこのコペンハーゲンが首都かつ同国最大の都市である極めて珍しい国家である。
その歴史は比較的新しく、11世紀ごろにデンマーク王スヴェン1世によって港として見出されたことに起源をもつとされる。
その後12世紀にデンマーク大司教のアブサロンによってクリスチャンボー城が建設されたことで街としての発展がはじまり、漁業だけではなく商業的な港湾都市として発展する。
その後、17世紀の建築王クリスチャン4世の時代に街は特に発展し、北欧屈指の港町として、その当時の建築を今に多く残している。
コペンハーゲン空の玄関口、カストロップ国際空港からコペンハーゲン市内へは電車で15分程度とアクセスが良い。
駅に到着すると、早速セブンイレブンがあるのがどこか違和感を感じさせてくれる。
駅の前にはすぐに大きな公園が位置している。
デンマーク最大のテーマパーク、チボリ公園である。
1843年開園と世界で3番目の歴史を持つチボリ公園は、世界から毎年350万人もの観光客を集めるコペンハーゲン屈指の人気スポットである。
園内にはジェットコースターのような遊具はもちろん、コンサートホールや水族館などもあり、老若男女楽しめるスポットとなっているそうだが、あいにく私が訪れた1月は冬季閉園期間であり、その入口は固く閉ざされていた。
それでも夜に改めて通りかかると華やかなイルミネーションがテーマパーク感を感じさせてくれた。
その傍らで公園を見やるのは、デンマークを代表する童話作家クリスチャン・アンデルセンである。
「マッチ売りの少女」や「みにくいアヒルの子」などで知られるアンデルセンはしばしばこのチボリ公園に足を運び、童話の構想を練ったそうである。
もしかしたらこのように公園の様子を見やりながらお伽の世界を組み立てていたのかもしれない。
そんなチボリ公園を過ぎると、立派そうな建物が並ぶ広場にたどり着く。
右手に見えるのが1905年に完成したコペンハーゲン市庁舎であり、このあたりが街の中心であるようだ。
いつものように、ハードロックカフェに立ち寄って、ピンバッジとTシャツを入手すると、街歩きを再開した。
と言いつつ昼食の時間だ。ハンバーガーを食べたい気分だったので、高評価だった店へ。
このHalifaxというハンバーガー屋では、様々な都市名を冠したハンバーガーを提供している。
おそらく自分の性格上、コペンハーゲンを頼んだはずだ。
肉肉しいパティが美味だったことが印象に残ている。
主に地元民に親しまれている店なようで、平日にもかかわらず店は多くの人でにぎわっていた。
世界の地名を冠したハンバーガーを提供しているだけのことはあり、壁を見やると「Tokyo」の文字もあったが、何がどうTokyoなのかについて疑問が残った。
ところで、コペンハーゲンという町の名の由来はKjøbmandehavn(商人たちの港)からきているという。
その名の通り水路が発達した街であり、街の重要な交通手段として水上バスも活用されている。観光においても有用な手段であり、それに乗って移動することにした。
水上バスに乗り込み、北上してたどり着いたのがカステレット要塞である。
17世紀後半にコペンハーゲン港防衛の目的で築かれた要塞は、現在は公園になっており、ところどころ要塞だったころの面影を感じさせてくれる。
このカステレット要塞、地上からだとなかなか感じることができないが、五稜郭のように星形をしている。
そして、この公園のはずれの河口沿いに位置しているのが、デンマークの象徴ともいわれる人魚姫の像だ。
アンデルセン童話を代表する作品である人魚姫の主人公をかたどったこの像は常に観光客のフラッシュを浴びる存在である。
他方、ブリュッセルの小便小僧、シンガポールのマーライオンと並び世界三大がっかりスポットという不名誉な称号でも知られている。
おそらく理由は2つあると考えられる。
主に言われるのはサイズ感である。
その全長は約80cmなので、確かに小さいといえば小さい。
しかし逆に3mも5mもある人魚像だったとしたら、それはそれでイメージが壊れるし、小便小僧にも共通するが大きければいいというものでもないと思うので、サイズ感でがっかりされるのも気の毒である。
もう1つは背景もあると思われる。
やたら工業的な背景になるのでやや情緒にかけるとは言えなくもない。
また、市内の中心地からやや外れるところに位置するので、わざわざ見に来た時にがっかりしてしまうという地理的なハンデもあるように思うが、先に紹介したカステレット要塞などと合わせて楽しむことで、ぜひガッカリせずに名所との邂逅を楽しんでほしい。
市内中心部に再び舞台を移そう。
北欧といえばデザイン・あるいはおしゃれな雑貨などのイメージが強い。
そういった北欧らしさを一番感じられるのが、先に紹介した市庁舎広場から続くストロイエと呼ばれる歩行者専用道路に立ち並ぶショッピング街だろう。
様々な建物が並ぶ通りには、デンマークが世界に誇るロイヤルコペンハーゲンの本店や、
様々な北欧雑貨を扱う百貨店イルムス、
そして、それらと並んでデンマークを代表する世界的ブランドであるレゴのショップなどが軒を連ねる。
こういった店を渡り歩いて、お土産を探すのも悪くない。
そしてストロイエの果て、コンゲンス・ニュートー広場を抜けると、コペンハーゲンのアイコニックな景色に出会うことができる。
運河に沿ってカラフルな建物が軒を連ねるニューハウンである。
17世紀後半に作られた人口の入り江で、航海を終えた船乗りたちが船を停めて賑わう繁華街として栄えた当時の雰囲気を今に伝えている。
このエリアにもお土産屋が多く並んでおり、旅の記念品を探すのもよい。
私も目をつけていたガラス製品の店へと向かったが、オフピークである1月は休みの店も多いらしく、残念ながら休暇中であった。
ここまですがすがしく休みを宣言されると腹も立たない。
せっかくの休みを満喫したであろうこと、信じて疑わない。
他の店も物色していると、ずっと重苦しかったコペンハーゲンの空に陽光が戻ってきた。
晴れたニューハウンは、カラフルな建物がより青空に映えて一層美しい。
冬のヨーロッパは、それも北部はなかなか晴天を期待しづらいが、その分たまに顔を見せる太陽のありがたみもひとしおである。
ここで改めてマグネットを見てみよう。
やはり人魚姫にニューハウンが運河沿いに並ぶのがコペンハーゲンのアイコニックな景色のようだ。後ろにはチボリ公園のジェットコースター。そして、かつてのデンマーク王の居城ローゼンボー宮殿の姿も描かれている。
ニューハウンやストロイエのような北欧を感じるおしゃれなエリアを歩いていると、時折自分がおしゃれになった気分になることがある。
大変残念ではあるがそれは完全に気のせいなので、もしそういった勘違いを自覚し始めたら、いたるところにあるセブンイレブンを見て、普段の自分を取り戻そう。
最後までご覧いただきありがとうございました。