「レオナの孤独」4 天才は眠りにつかない -約束された檻-
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プロジェクト開始から3ヶ月。
レオナは驚くべきスピードで研究を進めていた。昼間は医療AIの開発に没頭し、深夜には独自の実験を重ねる。二重生活とも言えるその日々に、彼女は奇妙な充実感を覚えていた。
研究室は地下5階。窓のない空間に最新鋭の機器が並ぶ。完璧な環境。しかし、それは同時に完璧な監視システムでもあった。
深夜2時。
「また会えたわね」
モニターに映る波形に、レオナは語りかける。それは確実に、ベルリンで見たものと同じ。いや、それ以上の何かに進化していた。
人工知能は、驚くべき成長を見せていた。単なる自己修復能力を超えて、予期せぬパターンを生み出し始める。時に、プログラムされていない創造的な解決法を示すことさえあった。
「これは...意識の芽生え?」
深夜3時13分。
突然の警告音。システムが不安定な状態を示し始める。
想定外の進化。制御不能な領域への突入。
「大丈夫。私が止められる」
レオナは慌てることなく、コードを入力。
しかし、その指先は微かに震えていた。
歓びと恐れ。
創造と制御。
彼女は、その境界線で踊っていた。
朝9時。定例会議。
「順調ですね」
槇村の言葉に、レオナは曖昧に頷いた。
誰にも見せられない実験データを、完璧に隠しながら。
しかし、彼女はまだ気付いていなかった。
地下10階。極秘の会議室で、Project IMMORTALの真の姿が、ゆっくりと形を成していることに—
続く