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親の物忘れ、もしかして認知症?薬剤師が教えるチェックポイントと対策
ご両親の物忘れについて、「もしかしたら認知症?」と悩んでいる方へ
「お母さん、最近お薬ちゃんと飲めてる?」
何気なく聞いたら、「飲んだよ!」と言うけど、薬のシートはそのまま。
数日分まとめて飲んでしまっていたり、逆に何日も飲み忘れていたり…
こんな場面、ありませんか?
親の物忘れが増えると、「これって歳のせい?それとも認知症?」と不安になりますよね。
でも、どこからが「普通の物忘れ」と違うのか、なかなか判断しにくいもの。
私の母も最近物忘れが多く、「もしかして??」と不安になったりもしました。
そこで今回は、薬剤師として、そして認知症キャラバン・メイトとしての視点からお話しします。
認知症の初期症状と、加齢による物忘れの違い。そして、「早めにできる対策」について、わかりやすくお伝えします。
こちはの記事を確認いただくことで、
ご家族の認知症を早めに気づき、数年後の悪化を防ぐことが可能になります。
認知症と物忘れ、ここが違います!
「最近、お父さんがよく忘れっぽくなった気がする」
それは物忘れでしょうか? 認知症でしょうか?
実は「加齢による物忘れ」と「認知症の初期症状」には、大きな違いがあります。
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みなさんのご両親の物忘れはどちらに当てはまりますか?
この他にも今の季節を答えられない、なども認知症の症状として有名です。
私の母は今日のお昼ご飯のメニューは忘れますが、食べたこと自体は覚えています。
今のところ認知症ではないと判断できそうですね。
「薬の飲み間違い」がきっかけで気づいたケースも
薬剤師の視点でも考えてみましょう。
「認知症かも?」と家族が気づくきっかけは、意外と「薬の飲み間違い」であることが多いです。
エピソード①:「母が薬を飲んでいるはずなのに、余っている?」
ある日、薬局に娘さんが相談に来ました。
「母が『ちゃんと薬を飲んでる』って言うんですけど、薬が余ってるんです。」
詳しく話を聞くと、1週間分の薬を準備していたのに、なぜか数日分が余っている。
「お母さん、飲み忘れてない?」と聞くと、「そんなはずないわよ、毎日ちゃんと飲んでる」ときっぱり。
そこで、娘さんが念のため家の中を探してみたら… 薬がいろんな場所から出てきた。
• 飲んだつもりで、薬をテーブルの上に置いたままになっていた
• ポケットやカバンの中にしまい込んでしまい、飲み忘れていた
• 「さっき飲んだっけ?」と不安になり、新しい薬を出してしまうことも
これは典型的な認知症の初期症状です。
お母さんは「飲んだ」という記憶があるものの、実際には口にしていませんでした。
逆に「飲んだか不安」になって、何度も新しい薬を取り出してしまったりしていたのです。
娘さんに「認知機能が低下している可能性があるので、病院で相談してみましょう」とお伝えしました。
その結果、軽度の認知症と診断されました。
エピソード②:「お父さんが薬を1週間分、一気に飲んでしまった」
また、こんな相談もありました。
「うちの父、薬を飲みすぎちゃって…」
詳しく聞くと、1週間分の薬を一度に飲んでしまったとのこと。
お父さんに理由を聞くと、「ちゃんと飲んだか分からなくなったから、とりあえず全部飲んでおこうと思った」と話しています。
認知症の初期では、「いつ」「どれくらい飲んだか」がわからなくなることがあります。
そして、判断力が低下することで「足りないよりはいいか」と、自己判断で過剰に服薬してしまうこともあるのです。
みなさんの周りに、お薬の管理が心配になってしまうようなケースはありませんか?
少しでも気になる場合は、先生に相談してみましょう。
「まだ大丈夫」じゃなく「まだできることがある」
認知症と聞くと、「もう治らない」「どうしようもない」と思われがちです。
しかし、実はそうではありません。
確かに現時点では認知症を完全に治す薬はありません。
でも、進行をゆるやかにする薬はあるんです。
例えば、アリセプト(ドネペジル)などの認知症治療薬は、早い段階で服用を始めることで、進行を遅らせることができます。
これが数年後の状態に大きな差を生みます。
「まだそんなに症状が出ていないから、様子を見よう」ではなく、
「まだ軽いうちにできることを始めよう」という考え方が大切です。
さきほどのケースのように薬の飲み間違いが「気づくきっかけ」になることもあります。
認知症の初期症状のひとつとして、「薬の飲み忘れ」「過剰服薬」が増えることがあります。
その他にも、こんなサイン、ありませんか?
✔ 「飲んだっけ?」と何度も確認するようになった
✔ 薬のシートがバラバラに剥がされている(順番を気にしなくなっている)
✔ 1日に2回以上飲んでしまい、気づかずに続けてしまう
こうした変化が見られたら、「認知症のサインかも?」と考えてみるのも大切です。
受診の結果、「認知症ではなかった」のであればそれは幸いなことですよね。
もし認知症なのであれば、できる限り早くお薬を始めて欲しいと思います。
まとめ|「認知症かも?」と思ったら、早めにできることを
• 物忘れと認知症の違いは、「経験そのものを忘れるかどうか」
• 認知症は治せなくても、進行を遅らせる薬がある
• 早めに治療を始めることで、数年後の状態が変わる
• 薬の飲み間違いが認知症のサインになることも
「まだ大丈夫」ではなく、「まだできることがある」。
そんな考え方で、親御さんの健康を支えていきましょう。
「最近、ちょっと気になるな…」と思ったら、まずはかかりつけ医や薬剤師に相談してみてくださいね。
最後までご覧いただき、ありがとうございました。
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