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在日日本人
2016年8月10日 07:36
身体は全く動かないのに、視聴覚器官だけはまだ生き残っていた。 どうやら全身の神経の配線がズタズタになったらしい。 が、いい事もある。 これで痛覚が生きていたら、俺は痛みの無限地獄の真っ只中にいる筈だ。 でもストレッチャーに乗せられて、見覚えのあるこの病院の緊急搬入口を見上げた瞬間、俺はマズイ!と思った。 ここは、兄、宗一郎の息の掛かった私立大病院だった。 普段でも俺は兄貴に引け目を感
2016年8月22日 07:09
12: 「カサブランカ・ダンディ」 手筈は整っていた。 俺が羽織っている皮ジャケットの内ポケットには、神代組の末端からくすねた麻薬が1キロ入っている。 芝居じゃない、実際に俺が売人のヤサからそれをくすねて来たのだ。 勿論、情報は蛇喰が流してくれたのだが、このカラクリは神代組の上層部の数人しか知らない。 神代の組員が、俺の探偵事務所へ押し込んできたのは、俺が盗みを働いたその日の夕刻だった