マガジンのカバー画像

目川探偵事務所 The GORK 1部「沢父谷姫子の失踪」編

12
運営しているクリエイター

#連載小説

The GORK   1: 「S.O.S」

The GORK   1: 「S.O.S」

 身体は全く動かないのに、視聴覚器官だけはまだ生き残っていた。
 どうやら全身の神経の配線がズタズタになったらしい。
 が、いい事もある。
 これで痛覚が生きていたら、俺は痛みの無限地獄の真っ只中にいる筈だ。
 でもストレッチャーに乗せられて、見覚えのあるこの病院の緊急搬入口を見上げた瞬間、俺はマズイ!と思った。
 ここは、兄、宗一郎の息の掛かった私立大病院だった。
 普段でも俺は兄貴に引け目を感

もっとみる
The GORK   12: 「カサブランカ・ダンディ」

The GORK 12: 「カサブランカ・ダンディ」

12: 「カサブランカ・ダンディ」

 手筈は整っていた。
 俺が羽織っている皮ジャケットの内ポケットには、神代組の末端からくすねた麻薬が1キロ入っている。
 芝居じゃない、実際に俺が売人のヤサからそれをくすねて来たのだ。
 勿論、情報は蛇喰が流してくれたのだが、このカラクリは神代組の上層部の数人しか知らない。
 神代の組員が、俺の探偵事務所へ押し込んできたのは、俺が盗みを働いたその日の夕刻だった

もっとみる