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第53話 CFマトリクス分析❸分析の実践|コンビニ・ハンバーガー・牛丼

キャッシュフローマトリクス(以下、CFマトリクス)について徹底解説するシリーズ第3回です。第1回および第2回では、FCF版アクルーアル版それぞれのCFマトリクスの概要や独自性についてわかりやすく解説しました。

今回はいよいよ、分析の実践回です。CFマトリクスを活用し、上場企業の決算を具体的に分析していきます。分析時の解釈・考察方法など分析の解像度を上げて実務に活かしたい方はぜひご覧くださいませ。

■参考文献(一例)
この1冊ですべてわかる経営分析の基本
デューデリジェンスのプロが教える 企業分析力養成講座

■想定読者 以下2話を読了済のビジネスパーソン
第51話 CFマトリクス分析❶フリーキャッシュフロー
第52話 CFマトリクス分析❷アクルーアル

それでは本編スタートです▼

分析対象企業リスト

今回は以下の企業のCFマトリクスを分析します。わかりやすさ・比較しやすさを優先して「一般的に知名度が高い」「主力事業が売上の多くを占める or すぐにイメージできる」企業を中心に選びました▼

①セブン&アイ・HD
②日本マクドナルドHD vs モスフードサービス
③ゼンショーHD vs 吉野家HD vs 松屋フーズHD

以下では上記企業のCFマトリクス図を見てザイマニ管理人が一番気になった点を深掘り解説する形で進めていきます。では早速始めましょう▼

CFマトリクス分析の実践

①セブン&アイ・HD

まずは複数企業の比較ではなく、単一企業分析でCFマトリクスに慣れていきましょう。言わずと知れたコンビニ大手セブン&アイを取り上げます▼

セブン&アイのFCF版CFマトリクス図
セブン&アイのアクルーアル版CFマトリクス図

ちょっとだけ復習です。本シリーズ第1回・第2回で解説したCFマトリクスの基本的な分析観点は以下の通りでしたね▼

1|FCF・アクルーアルはプラスかマイナスか?
2|FCF・アクルーアルはどの領域に位置しているか?
3|FCF・アクルーアルはどのように推移しているか?

セブン&アイで最も気になったのはFCF版CFマトリクスの動きです。分析観点で言えば「2|FCF・アクルーアルはどの領域に位置しているか?」ですね。2022年は投資期、それ以降は安定期に移行しています。

ここでグラフの位置関係から2022年の投資CFのマイナス額は、同年の営業CFの3倍ほどありそうです。一体2022年度は何に投資したのでしょうか?有価証券報告書をチェックしてみましょう▼

出典|株式会社セブン&アイ・ホールディングス
有価証券報告書 ‐ 第17期(2021/03/01 ‐ 2022/02/28)

2022年の投資CFのマイナス額が異様に大きい

投資活動によるキャッシュ・フローは、2,505,566百万円の支出(前年同期比635.7%)となりました。これは、主に海外コンビニエンスストア事業におけるSpeedway取得による連結の範囲の変更を伴う子会社株式の取得による支出が2,295,563百万円、店舗の新規出店や改装などに伴う有形固定資産の取得による支出が337,505百万円となったことなどによるものであります。

出典|株式会社セブン&アイ・ホールディングス
有価証券報告書 ‐ 第17期(2021/03/01 ‐ 2022/02/28)

上記文章から、投資CFマイナス額の約90%は海外コンビニSpeedway(スピードウェイ)の買収費用であることがわかりますね。2兆円超の資金を投じて3,800店舗を買収するなど海外市場でのさらなる事業展開を睨んでの投資だと推察されます。

また、先ほどの有価証券報告書の画像にある2022年から過去5年間の投資CFの推移を見ると、本件の買収がセブン&アイにとって一大プロジェクトであったことも伺えます。本件の主旨とは異なるため割愛しますが、2023年度以降の業績がどのように推移しているのか分析するのも面白そうですね。

以上がセブン&アイのCFマトリクス分析でした。ちょっと堅苦しい感じになったので次は軽めに。CFマトリクス関連のクイズです▼


②日本マクドナルドHD vs モスフードサービス

Q マクドナルドとモスバーガー。より営業CFを稼いでいるのは?

ハンバーガー業界トップ2を比較してみましょう。ファーストフードの印象が強い一方で値上げも多いマクドナルド、国産牛100%など品質の高さに力を入れているモスバーガー、果たしてより多くの営業CFを稼いでいるのはどちらでしょうか?ぜひ、CFマトリクス図を見る前に一度考えてみてください。

それではさっそく確認してみましょう▼

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