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妄言付き日記(妄言部有料)

仕事でやらかす。あくまでも事故だったのだが、このシーズンがかきいれ時とされる商品を提供するための設備を破損してしまったのである。クレーマーとのエンゲージを除けば、このように会社への損害が発生する類いの出来事は未だ経験の無いことだった。名状しがたいストレスを感じている。深夜に上司へ報告する。とりあえず自分が行くまでは設備の稼働を停止させろ、とのことだった。夜直が明ければ、前々から予約していた池袋はグランドシネマサンシャインの『トップガン マーヴェリック』IMAXレーザーGTを観に行くことになっていたが、このような精神状態で、果たして十全な観賞体験たりうるだろうか、という一抹の不安がよぎる。僕にとって労働とは、趣味の時間を充実させるための純粋な資金調達の手段でしかなく、ここで出来した要素が趣味の時間に悪影響をもたらすことは言語道断である。もちろん、映画とはそれに至るまでの道程、起こった出来事、自らの精神状態を反映させた、いわば自分自身の中にあるものを通してしか認知することのできない非常に主体的、相対的なメディアであり、ある種の「問題」は映画という「体験」を豊かにするスパイスとして機能することもしばしばだが、こと今回にかんするかぎり、私自身への精神的ダメージが許容の埒内から著しく逸していた。
案の定、映画の冒頭で退席してしまった。非常に気分が悪い。おそらく叙上のストレスに起因するものであろうが、夜直を完了するために過剰摂取したカフェインもそれに一役買っていたのだろう。体重がアベレージを大きく下回っている僕にとって、コーヒーでさえ数杯呷るだけで気持ち悪くなってしまう。『トップガン~』自体はDolby Cinemaで観賞しており、今回は二回目だったので経済的損失は軽微であったが、体力の損耗は甚大であった。
行き帰りは端末のローカルファイルに全話保存してあるヒデラジを聴く。最近、なにかをアウトプットすることを怠っていたので、ヒデラジ内で言及されていた日記をしたためることにした。善は急げと帰途で推敲。記憶の外部化である。頚から側頭部にかけての血管をじわじわと這うように吐き気がのたうつ。この感覚をも言語化、共有化することができるなんて、ことばってやっぱりすげえなあ。
実を言うと夜直の暇な時間に、映画好きの友人にとあるプロットを提出していたことが、日記をつける――換言すれば文章をこさえるトリガーになっていた。そのプロットとは『トップガン~』の有り得たかもしれないもうひとつのシナリオ、観るものすべてが嫌悪感を催すような、悪趣味なユーモアの充溢する、本編とはまったく関係の無い妄言のことである。以下にコピペする。

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生きるわよ