見出し画像

長い月日を掛けて貯まった小銭

おや、見慣れない機械だな。

そんな風に思ったのはいつだっただろう。あまり使われていない印象を受ける一台のマシーンがある日突然、近所のスーパーの入り口付近に設置されていた。

買い物、特にスーパーでの買い出しには時間を掛けたくない方なので、その見慣れない機械をマジマジと観察する間もなく月日は流れていった。

先日、たまたまその機械を実際に使用している人を初めて見た。何やらチャリンチャリンと派手な音を立てて小銭が落ちる音がしている。なかなか楽しそうだ。

その人たちがこれまたいいタイミングで去ったので、少しその機械をチェックしてみることにした。どうやら小銭をクーポン券にしてくれるらしい。そのクーポンで買い物をしてもいいし、現金を受け取ってもいい。ただ、あくまでも店内のレジでどちらかを選択しなければいけない。他の店でクーポンが使えるような仕様にはなっていなかった。

画像2

気になる手数料だが、これまた予想通りどこにも説明らしきものがない。あやしい。大丈夫なのか、これ。(後で気付いたのだが、フライヤーには下の方に9.9%という記載アリ)

そして、また何週間か過ぎた。取引先の銀行に持って行って口座に振り込んでもらおうと、数年前に銀行から袋をもらって詰めてあった小銭。ずーっと気に掛かっていたのだが、地下鉄で二駅分の移動が面倒なのと、何かの手違いで振り込めなかったときのシュミレーションをしたら行く気がなくなってしまったのだ。ベルリンの悪いところは、物事が一度でスムーズに終わることが限りなく少ないことだろうか。

そんなわけで、何年もそのままになっていた小銭の詰まった袋をとうとう、そのぼったくられそうな機械に放り込んでみることにした。

ザラザラザラ、ジャー!チャリン、チャリンチャリン!なかなか派手な音を周囲に響き渡らせながら小銭の雨が降る。隣で花を見ていたお姉さんが、思わず声を掛けてきた。「余計なことを聞くようだけど、一体どうやってこんなに小銭を貯めたんですか?まさか財布の中身じゃないですよね?」

私にもよくわからない。ただ、お姉さんの予想はほぼ当たっていて、財布に小銭を溜めておくのが嫌いなのですぐに箱に移してしまうのだ。それが、恐らく5年分とか10年分溜まっていたのではないだろうか。よくわからない。

とにかく、気になる合計金額は10ユーロ前後だという予想を遥かに超え、40ユーロほどになった。文字通り、「チリも積もればなんとやら」である。

ただ、このいかがわしいマシーン。私みたいなタイプの人間をよく理解して作られていた。スタートボタンを押すとすぐに、「両替の手数料は9.9%です。よろしければスタートボタンを押して、小銭を容器の中に入れてください。」という表示が出た。え、手数料10%ってぼったくりでは!?と思ったのだが、10年越しの夢が叶う瞬間にそんなケチなことを言ってられないではないか。それに、ここでやらなければ恐らく一生やらない。間違いない。買い物をするのにこんな重い袋を持ちながらやりたくない。

結果は以下の通り。

画像1

ご近所で似たような機械を目撃された方は是非。貯まっている小銭を一気に処理できるので、かなりスッキリしますよ!


タイトル写真:Photo by Marcel Strauß on Unsplash

サポートは今後の取材費や本の制作費などに当てさせて頂きたいと思います。よろしくお願いします!