2024年4月7日の正午
アトリエのベランダでポール・オースターの『孤独の発明』を読んでいた。
「見えない人間の肖像」と「記憶の書」の二編から成る『孤独の発明』はとても奇妙な本で、大雑把に言えば親子、家族にまつわる物語なのだが、語り手の存在が幽霊のように揺らぐので、読んでいるうちに今自分が誰の声を聞いているのかがわからなくなってくる。もちろんだからといって駄作というわけではなく、むしろ物語が要請するすべての声、いってみれば死者の声をより合わせたようなその奇妙な語り以外では、この物語を記述することは不可