融合。
昨今、介護とICTとの関係がより強調されてきている。政府も今後施設でのインカムやセンサーの使用を推奨していく流れのようだ。インカム使用は、スタッフ間の導線を短縮できるツールとして役立つし、センサーも利用者の安全確保ということに一定程度役割を持てる。今後も加速する人手不足を補うものとして期待できるのだ。しかし、使うのは人であり、機械に使われるような状態になってしまっては意味がなくなる。自分はそこが少し気になっている。
見守りセンサー。例えば、思いと身体の動きが一致せず、危ないとされている利用者さんがいたとする。その方にセンサーを使用する。確かにセンサーの反応で駆けつければ、転倒や転落を防げる一因になるかもしれない。しかし、利用者さんとしては特に移動する気もなかった場合、ただ起き上がっただけで『なんでいちいち見に来るの?』という状況が起きる。これは、まるで監視されてるみたいで自由がない。普通の生活ではなくなってしまう。
さらに、センサーをたくさん使うことで、スタッフが少ない夜勤中に各所で同時多発的に鳴りっぱなしという現象も起きる可能性もある。本来の人手不足を補いながら安全を保つという目的から離れ、余計手間がかかり、まるで機械に拘束されるかのような状況が起きかねない。むしろセンサーはやたらに付けないで、その利用者さんの傾向や、身体機能をできるだけ正確に見極めておくことで事故防止や自由を保障できて、スタッフの余計な負担も減らせることもある。
ベッドの高さを変えたり、ベッドのサイドレールの位置や種類を変えたり、ベッドの位置自体を変えたり、ベッド横に車いすを付けたり、靴の置く場所を工夫したり、挙げればキリがないくらいたくさんある。
このように、テクノロジーを取り入れるにはデメリットもあることをしっかり踏まえておきたい。そのうえで、どこにどう使えば安全に、監視せず、普通の生活が守られて目的に叶うのか、適材適所をよく考えていきたい。センサーの種類も含めて。
介護の業界は、まだまだ多角的に関連づけて物事を進めていくことが下手な業界といつも感じてきた。このICTとの関係についても、単に『国が言ってるから』ではなくて、良い悪いでもなく、利用者さんの暮らしが継続し守られていくためにちゃんと考えなきゃいけないことだ。
これは自分たちスタッフがよりレベルアップできるチャンスなんだと思う。この人手不足の中、いかにして社会情勢の変化に適応して質の高いケアを提供できるか、普通の生活を守れるのか、この先の介護に対応できるのか試される。いや、介護業界がもっと社会から試される状況にならなければ。
テクノロジーとの融合で介護の質を上げていきたい。