見出し画像

富山旅の記録②|美術館はしごと海鮮三昧

こちらの続き。

大満足のトロッコ旅を終えて、夕方に宿へチェックイン。
部屋の窓からも川が見えて、嬉しくなる。

今回お世話になる「やまのは」さんは、Nさんが以前泊まったことがあるそうで、お風呂と景色がとてもよかった! とのこと。

夕食まで少し時間があったので、さっそくひと風呂浴びることにする。
ふたつの大浴場が時間によって男女入れ替わるシステムで、まずは「棚湯」へ。

すこし熱めの温度の内湯で身体をあたためた後、露天風呂へ移る。
だだっ広い湯舟が「棚湯」の名の通り幅広の階段状に区分けされていて、いちばん下まで降りると眼前には流れる川と二つの山彦橋が!
大パノラマの景色に、さっきの河原露天風呂の延長にいるような錯覚に陥る。
お湯は少しぬるめで、きりっと冷えた山の空気と一緒だといつまでも浸かっていられそう。

浴室内にはそれなりに人がいたけれど、湯船がかなり広いのとその中でいくつか空間が仕切られているので、それぞれがほどよく自分の陣地を確保できるような塩梅だった。温泉によっては趣向を凝らした小さめの湯船をいくつも配置するようなところがあるけれど、そうするとすべての湯船を体験しなければ! と思ってしまう(そして順番待ちが発生する)たちなので、何も考えずゆっくり楽しむには大きな湯船がどーん、の方がいいなあと思う。

まだまだ入っていられるぞ、と思いながら夕食へ。

飲み放題プランがかなり太っ腹で、クラフトビール以外はワインも40種類近い(!)地酒もメニューにあるものがすべて飲み放題との由。迷わずお願いする。
自分でバーカウンターへ取りに行く仕組みで、ドリンカーのおにいさんが私の腕に付けたリストバンド(飲み放題を注文した証にもらえる)を見た瞬間「お酒いっぱいありますよー!!」とニコニコしながら言ってくれたのがよかった。

食事は久しぶりのバイキング形式。
昔はすぐお腹いっぱいになってしまってちょっと損をした気持ちになりがちだったのだけれど、お酒を覚えたからか、いつにまにかいつまでもだらだら食べられる素敵な仕組みに変貌していた。旅館の食事って、「最初はビールが飲みたい! でも前菜はめちゃくしゃ日本酒に合うやつ!!」といううれしい葛藤がたまにあるじゃないですか。バイキングはそのあたりが自分でコントロールできるのがよい。
この日は最初に山菜の天ぷらと焼きそら豆でビールを飲んで、その後は日本酒に切り替えてアテっぽい小鉢(ほたるいかとか、筍の木の芽味噌とか)やお刺身を延々食べていた。バイキングのお刺身、小さくて乾いているものが多いイメージで少し苦手だったのだけれど、ここのは鯛も鰆も鮪もぷりっと肉厚で、味が濃くておいしかった。
お腹がいっぱいになってきたら一休みして、おそらくはワインに合わせる前提で用意されているであろうチーズや鴨スモークと一緒に、重ための日本酒をちびちびすることもできる。たのしい。

部屋食で優雅に食事をとるのもいいけれど、たまにはこうやってにぎやかな旅館の食事もいいなと思った。会場内の老若男女がおそろいの浴衣を着て、お顔を幸福に光らせ、お盆を持ってうろうろしている。この時間を楽しみつくしてやるぞというエネルギーのようなものが充満していて、よい。
特に小柄なおばあちゃんがお皿に乗りきらないくらいのお寿司を目の前にしてニコニコしているのを見た時はサイコーの気分になった。

7時過ぎくらいに食べ終えて(ついつい〆にカレーまで食べてしまって苦しいくらいの満腹)、部屋で一休みしてからもう一回温泉へ。真っ暗な中でお湯に浸かると、手足がゆらゆらと溶けだしていくような感覚に陥った。

翌日は気合で6時半に起き、朝風呂を堪能して再び食堂へ。昨日あんなに食べたのに、きちんとお腹が空いていることが不思議。

わたしのかんがえたさいきょうのあさごはん

ごはんのお供が多すぎたので、思い切って焼き物や納豆なんかは諦め、小鉢系を制覇することにする。烏賊そうめんとオクラ、甘エビや鮪のお刺身にとろろ昆布を添えたもの、蛍烏賊の沖漬、明太子。小松菜炒めと浅漬けを箸休めに。に、日本酒が欲しい。

お茶碗半分くらいのご飯でなんとか耐えきって、お代わりのかわりにとろろ昆布を巻いた小さなおにぎりをいそいそと取りに行った。富山ではおにぎりに、海苔の代わりにとろろ昆布を巻くことが多いらしい。おいしかったので家でもやってみたい。

部屋に戻って荷造りを終え、ぼんやり川を眺めていたら、窓から見える切り立った崖のかなり上のほうに、がけ崩れ防止のためであろう養生をしてあるのを見つけた。

崖の上のほう、灰色の部分

足場も無さそうなのに、どうやって作業したんだろうか。
あの崖が(おそらくがけ崩れによって)できた時、周りに被害はなかっただろうか。そんなことを考えて、すこししんとした気持ちになる。
昨日トロッコに乗っているときもそうだったけれど、自然って楽しむだけのものではないんだよなあ、と改めて思った。

チェックアウトを済ませて、また緑をかき分けながら進む電車に乗り、富山駅へ。
富山県立美術館を目指して、環水公園を突っ切る。

左側は「世界一美しいスターバックス」に認定されたことのあるスタバ、との由

煉瓦造りの大きな塔や橋、広い運河、芝生がきれいな公園だった。芝生にテントを張り、その横の木陰に寝転んで読書をしている人がいて、なんて素敵な休日! と嫉妬する。
富山、いたるところに水の流れがあって、そこがすごく好きだなあと思う。街の風通しがよい感じ。

富山県立美術館は「オノマトペの屋上」を目当てに訪れたのだけれど、思いがけずがっつり企画展を見てしまった。

本人の多作さに比例するように、展示量が多すぎて全然見終わらない、棟方志功展。

版画って正直あまり興味がなかったのだけれど、いざ実物を見ると不思議な立体感のようなものを感じて、面白い。おなじ印刷技術のはずなのに、画集に印刷したものとここまで迫力が違うのはなぜなんだろう。

若いころのものから晩年の作品まで網羅されていて、どれもそれぞれに良かったのだけれど、宗教をモチーフにしたものが特に好きだった。

四角い画面いっぱいに、窮屈そうにポーズをとる、躍動感たっぷりの神様、菩薩やそのお弟子さん。「二菩薩釈迦十大弟子」の、ひとりひとりの性格の違いまで感じられそうな顔つきやポーズの差をじっくり見ていると、いつまでも飽きない。同じくらいの太さの線で構成されているのに、男女で手や筋肉の表現が全然違うのも面白かった。
そのままモダンなインテリアになりそうだなあ、と思ったのは、柳宗悦が掛け軸に仕立てた「基督の柵」。とりどりの色で刷られた、直線的で荘厳な感じの基督像に、深い紺と金色で後光を模した中廻し。全然古臭い感じがなくて、このまま洋室(IDEEのソファとかが置いてある感じの)のタペストリーとして飾れそう。両脇にあった、十字架を配したデザインのものもよかった。

へとへとになりながら全部見終わって、昼食を取りそのままガラス美術館へ。図書館と一体型になっている構造がうらやましい。近所に欲しい。

常設展の「グラス・アート・ガーデン」の見ごたえがすごかった。
炎みたいだったり、海の生きものみたいだったり、夢の中の植物みたいだったりする、巨大なガラスのオブジェが組み合わさって、暗闇の中で極彩色の世界を作り出している。ド迫力の「イッツ・ア・スモールワールド」という感じ。
撮影は可能だけれどインターネットへの投稿はNGということで、それもなんだか硬派でいいなあと思う。破格の200円で見られるので、インスタの検索で満足せず実際にしっかり見に来てね、ということなんだろうか。(普通に著作権の関係かもしれないけど)

企画展も面白かった。

ガラス美術館、と聞いて、色とりどりで美しい器の展示(ガレみたいな)を想像していたのたけれど、どちらかというと現代美術の表現ツールとしてガラスという素材を選びました、ということだったり、ガラスという素材そのものの面白さを引き出す表現を追求しました、というような作品が多かった。編まれたり、発泡剤や砂と混ぜられたり、和紙で包まれたりして、それでも「ガラスじゃないとこうはならない」という必然性を担った作品たち。面白かった。

ミュージアムショップもとてもよかった。買おうか迷って結局買わず、今猛烈に後悔しているブローチを置いておきます。

美術館2軒だと時間を持て余すかしら、と思っていたけれど、予想以上にじっくり見てしまって気づけば16時。それでも夕食の予約には少し時間があったので、Nさんおすすめの洋菓子店まで足を延ばすことにした。

住宅街の中にぽつんとあるお店なのに、つぎつぎお客さんが入ってくる。
小ぢんまりした店内に所狭しと魅力的な焼き菓子が並んでいて、あれもこれもと迷いながらフィナンシェ(ヘーゼルナッツ味!)をふたつと、クッキーを一袋おみやげに。ガラスケースに並んでいたマカロンの種類の多さに目を回しながら、カシス味をひとつ買って、店の外で食べた。

さくふわっとしたメレンゲ部分にも、中のとろっとしたクリームにも、甘酸っぱいカシスの風味が効いていておいしい。食べ進めると歯の間で、まるごとのカシスの果肉がぷちっとはじけて果汁があふれ出た。マカロンを食べて「ジューシーだ」と思ったの、初めて。

食べたぶん消費するぞ、と意気込んで、ぐんぐん歩く。
17時に、Nさんおすすめの鮨屋に行く予定なのである。

蛍烏賊のお刺身と、たこの酢の物を注文してまずは瓶ビールで乾杯。
たこは「いいんですか?」というくらい大ぶり、蛍烏賊のお刺身には湯がいた肝が添えてあって、目じりが下がる。

お寿司は少しずつ頼むか迷ったけれど、聞いてみると「上握り」に食べたいネタがほぼ入っていたので、それをお願いした。

厚切りでピカピカのネタ!
アジが「半身か?」と思うくらい分厚くてびっくりした。
念願の白エビも、歯の間でぷちっと潰れる感触ととろけるような甘さに陶然としてしまう。

もう少し追加で頼むのもいいな、と思っていたけれど、シャリが結構大振りであっという間にお腹いっぱいになってしまった。昼食をしっかり食べてしまったのが敗因。リベンジしたい。次は最初にお刺身をいくつか頼んで、握りで締めるんだ。

ぽんぽこのお腹をかかえて、富山駅まで戻る。
新幹線の時間までスタバのコーヒーでお腹をなだめて、帰途についた。

1日目、7時過ぎに家を出て、帰り着いたのは23時過ぎ。
1泊2日とは思えない、中身のみっちり詰まった旅でした。



いいなと思ったら応援しよう!