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【詩】偽善者

降り続く雨に打たれて震える人に
傘を差し出しもせず
屋根の下まで手を引きもせず
温かなタオルとスープを与えもせず
共に雨に打たれて震える覚悟もなく
ただ「やまない雨はない」と言い放つような

真っ暗闇に閉じ込められて怯える人に
灯りを差し出しもせず
光の方へ手を引きもせず
甘やかなお伽話を聞かせもせず
共に闇に閉じ込められる覚悟もなく
ただ「明けない夜はない」と言って立ち去るような

そんな人にはなりたくないと
軽蔑して
憤慨して
罵倒した私に

それでは、お前はいったい何を為してきたのだと
閻魔様が尋ねるから

傘もタオルもスープも灯りも
持っていないのです

屋根も光もお伽話も
見つけられないのです

私には私の、やまない雨があり
私には私の、明けない夜があるから
他人の雨と暗闇に付き合って
さらなる痛みを背負う気力はないのです

偽善者にはなりたくなくて
善人にもなれないなら
せめて悪人のままでいようと
無言で立ち去ったのです

根源的な何かを為さずに
「やまない雨はない」
「明けない夜はない」
とだけ言い放って
他人の絶望を濃くするくらいなら

雲を蹴散らし、雨をやませる力を
太陽を引きずり出し、闇を割って照らす力を
海を焼き尽くし、二度と雨を降らせぬ力を
自転を止めて、二度と闇を起こさぬ力を

そうして大地を干上がらせて
痛みの元を絶ちきる力を

私に力を

悪人以上の悪人に
善人以上の善人に

解放者になる力を、私にください
 



この詩を手直しした作品が、詩誌『ココア共和国』2023年12月号に掲載されました(電子版のみ)。


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