【詩】咲かない花の声を聴け
固い蕾は咲かぬまま
誰にも顧みられずに
いつしか朽ち果てた
咲けなかった花のことは
誰も知らない
誰も気に留めない
この世界に響くのは
強風に折れそうになっても
日照り続きで苦しんでも
結局は美しく咲いた
そんな花の声だけだ
無数の蕾と
蕾にもなれなかったものたちが
栄養を根こそぎ奪われ
あるいは早々に摘み取られ
そうして朽ち果てていったからこそ
一輪の花があざやかに咲いて
輝いているのかもしれないのだが
咲けずに枯れていった花たちの
か弱き小さな声は
咲いて日を浴びる花たちの
大声にかき消され
始めから無かったことになる
だから、今日も
世界は輝かしいところだと
世界は優しく善いところだと
信じて疑わない人々が
固い蕾をむしり取っては
道端に投げ捨てて、踏みつけてゆく
この世界と生が
善きものかのように見えるのは
生を謳歌する者と
生き延びた者の声だけが
充満しているからなのだよ
咲けずに死した花たちは
苦しむことに力尽きた花たちは
声を出せず、何も語れず
あるいは、なけなしの力で何か語ったとて
この世界と生の残忍さを見たくない者たちによって
始めから無かったことにされる
今日も蕾は開き
色あざやかに花は咲き
世界は明るく輝かしく
善いところであった
水揚げがうまくできていなかったのか、この薔薇が咲きませんでした。
残念……。
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