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【詩】ごみ箱を空にする
記憶があるから生きていける
けれど、記憶は平穏な生の邪魔をする
あたたかく幸福な記憶は
時が経てばリアルさを失くし
おぼろげな夢のように遠くへ逃れて
もう、手繰り寄せても
身を守るためのタオルケットにはならない
心を蝕む記憶だけが
色褪せもせずに
いつまでもいつまでも呼び覚まされて
脳を肺を手足を、体じゅうを侵食しては
虫食いのように荒らしていく
要らない記憶を全部、ごみ箱に捨てて
さらに「ごみ箱を空にする」をクリックすれば
消去しましたという偽情報を信じ込めるような
そんな都合のいいシステムにはなっていない
記憶があるから生きていける
記憶が私を構成している
要らない記憶を全部削除したら
私の体はやっぱり虫食いみたいに
がたがたのぼろぼろになるのだろうか
それでも構わないのに
どのみち虫食いの痕だらけになるのなら
心まで蝕む記憶は全部削除して
ごみ箱を空にしたい
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