【詩】ひび割れる
ぼぉーん、ごぉーんと
世界がひび割れる音がする
テレビの中の晴れ着、狂乱、紅白金銀紙吹雪
それは本物なのかい、誰かがそう言ったのかい
そう見えているのかい、見えているだけじゃないのかい
世界がひび割れ始めて、もう映すべきものは何も無いから
砂嵐を網膜の奥でサイケに変えれば
ひび割れの音は聞こえなくなる
デジタル時計の全部の数字が変わるだけで
左半分は何かが変わったような顔して
右半分は何も変わらないんだ、ただの続きなんだって顔して
ぐにゃぐにゃゲシュタルトの加速するぐにゃぐにゃ
道化もしっぽ巻いてどっかへ行ったよ
ぼぉーん、ごぉーんを
熱い湯船に浸かって聞いているつもりだろうが
世界はひび割れているから湯船もお前も幻、ただの灰なんだよ
早く成仏しなよ、煮えたぎったマグマの爪先でさ
ただの炭素になるだけだ、来世なんか無いから安心しろ
足元を確かめもしないで無邪気に日の出を待っている
ちょうど足と足の間に修復不可能な裂け目ができて
体が裂けて裂けて裂けるチーズになるだけなのに
そして世界はひび割れて粉々になるから日は昇らない、二度と二度と
ぼぉーん、ごぉーんと
世界のひび割れは止まらない
青い殻が剥けて砕けて
表面にはびこっていた寄生虫どもが弾け飛んでいく
だからもう
ぼぉーん、ごぉーんを誰も聞いちゃいない
良かったね、よかったね、ヨカッタネ
宇宙の放射線に焼かれて爛れてジ・エンド
テレビはサイケな砂嵐
デジタル時計が律儀に虚しく歌ってる
ぼぉーん、ごぉーんは
あと何回
百八つまであと何回
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