クラスメイト全員を描くモブキャラのいない世界|おジャ魔女どれみのここがすごい
モブキャラクターとは、漫画、アニメ、映画、 コンピュータゲームなどに登場する、個々の名前が明かされない群衆のこと。
制作の都合上、どこにフォーカスをあてるか?ということもあるので、致し方ないことではあるのですが…個人的にはモブキャラって世界観があまり好きではないんすよね。
その根底にあるのは、僕は心のどこかで「誰もが人生の主役だ」って思ってるんだと思います。いてもいなくてもいい人間なんていない。代えが効く人間なんていない。
僕はDJパフォーマンスをやってるんですが、先日のライブの最後のMCでこんなことを言いました。
この日のラストに選んでた、サンボマスターの「できっこないをやらなくちゃ 」を流す前。
挑戦って言うと、世の中をあっと言わせるようなスケールの大きいものを浮かべるかもしれませんが、僕の言いたい挑戦はそういうことじゃないんです。例えば、人見知りで話しかけるのが苦手な人は、たった1人にでも勇気を出して話しかけれたら、それはもう挑戦。挑戦の尺度だけは自分で決めていいんです。規模じゃない。僕の言いたい「できっこないをやらなくちゃ 」はそういうことなんです
ここで急に話は逸れるんですが、おジャ魔女どれみという1999年から4年間放送された女児向けアニメがあります。
公式クラウドファンディングサイトより引用
このおジャ魔女どれみの世界にはモブキャラがいないんです。以下、制作陣の言葉です。
ほかのアニメ作品では、クラスメイトはクラスメイトA・Bと語られることが多いですが、どれみは全てのクラスメイトに名前がついていて、人物設定があって、いつも同じ席に同じ子が座っている、ちゃんとした教室を描きました。それは佐藤監督がやってみたかった手法でもあり、とても大変な作業でもありました。そこを手を抜かなかったのは、見てくれる子供たちにとって、どれみたちになりたいという憧れではなく、どれみ達と友達になりたいと思ってもらうというのが一番大切なコンセプトだったからです。
実際にアニメを見てみるとわかる(Amazonプライムで見れるよ)んだけど、この言葉通りクラスメイトそれぞれがキャラとしてしっかり描かれてて、フォーカスが当たる回が非常に多い。そしてその内容がほんっとすばらしい。
高飛車な子、花が好きで大人しい子、女子プロレスが好きな子や、特撮怪獣が好きな子などなど。あークラスメイトにこんなやついたなーって思わずにはいられない。
ちなみに、これを書いてる僕は41歳のもういい歳したおっさんだ。(自分をおっさんとは思ってはないけど)
おジャ魔女どれみもリアルタイムで見ていたわけではないどころか、実はまだシリーズ全部を見てはない。
たまたま今年公開された映画「魔女見習いをさがして」を見てあり得ないくらい感動し、この子たちをここまで結びつけたおジャ魔女どれみって作品はどんなものなの?って衝動から先日見始めたばかり。つまりニワカです。ニワカが偉そうに語ってます。
ただ、この作品には本当に語りシロがある。ニワカがこうやってnoteに書きたくなるほど。それはきっと前述したようにクラスメイトをしっかり描いてるから、自分と重ねる部分や友達を思い出すシーンが多いんだろうなー。
クラスメイトを扱った回は人間がしっかり描かれてるので、大人が見ても非常におもしろい。中でも不登校をテーマにした長門かよこちゃんを扱った回は「これ、本当に日曜の朝に女児向けに流してたの?」ってほどにすばらしい。
何がすごいかって、内容はもちろん号泣必死なんだけど…ここではあえてそこには触れない。(触れたい、めちゃくちゃ語りたい)
今回伝えたいのはその構成。問題を解決するまでに3話使ってるんです。これ、3話と聞くと、前編、中編、後編と連作で描かれてるように思うかもしれないけどそうじゃない。
この長門かよこちゃんにフォーカスを当てた回は20話、38話、45話とかなりの時間をかけている。
不登校というなかなか重めのテーマを、現実で時間をかけてゆっくり解決に向かうような…そんな丁寧な描かれ方をしてる。
特に第一弾である20話「はじめて会うクラスメイト」のラストは衝撃だった。不登校だった長門かよこちゃんがどれみちゃんと友達になって学校に行きたい!ってなる。一緒に登校してめでたしめでたし…ではなく、ラストで学校が目に入った瞬間にトラウマがフラッシュバックしてその場に倒れ込み、その場から逃げ出してしまう。
え!ここで終わり?ってびっくりして次の回に行くわけだが、次の回は全然違う話で心底驚く。長門かよこちゃんの話はこれで終わりなの?と。
でもそうじゃない。実際には問題なんてそんな簡単に片付くもんじゃないわけですよ。フォーカスが当たってない時も、長門かよこちゃんは苦しんでるし、クラスメイトや主人公のどれみちゃんたちも「なんとかしたい」という思いを抱えてるわけですよ。
どんな時間感覚で当時の子供たちは見てたんだろう?と、気になって調べてみる。20話が2001年の6月24日放送で、45話が同年の12月23日。実に半年もかけて不登校という重いテーマを描いてるわけです。その半年間のあいだに、直接は関係ないけどどれみちゃんたちの精神的な成長やコンプレックスを見せる回がある。それがあるから解決の回に説得力とリアリティが生まれる。すごいな。
どれみちゃんたち主人公はとても華やかです。
けど、まわりにいるクラスメイトにもそれぞれの人生があって、それぞれがそれぞれの人生の主役。いろんな問題や夢があって、そこに向き合って生きてる。
映画で興味を持ってはじめてアニメを見た時、1番に感じた違和感はそこだったんすよね。そう、違和感。
普通なら主人公やその中心のメインキャラが「私たちって仲間だよね!」的な空気で活躍していくのがスタンダードなアニメの印象。憧れを描くってこういうことだと思うんです。
けど、どれみちゃんたちは普通のクラスメイトにもガンガンフォーカスがあたる。どれみちゃんたちも「私たち親友じゃん!」的な言葉をかけてくし、それが薄っぺらなものではなくガチなんだってのが回を追うごとにわかる。自分たちだけが「魔女見習いだ」っていう選民意識がまったく感じられない。友達になりたい!そんな風に思わせてくれる。
これが制作陣が1番大切なコンセプトとして掲げた、憧れる存在ではなく、友達になりたいって思ってもらうってことか。当時の子供たちはみんな「どれみちゃんたちと友達になりたい」って思いながら見てたんだな…何これ、目頭が熱くなるんですけど…ちょっと休憩させてください…
ふぅ…休憩終わり。続けます。もう気持ちがいっぱいです。ほんと好きになってしまったんですよ、この作品が…
誰もが人生の主役だ。
そう、つまりこの女児向けアニメが、僕の伝えたいことを代弁してくれてるかのようで、ものすごく心にぶっ刺さったのです。
正直に言うとね、子供向けのアニメとして作られてるので、おもちゃメーカーとの絡みが当然あるわけで、変身シーンとか魔女をテーマにした魔法路線の回はちょっと個人的には退屈だったりします。
ただ、この魔法路線の話の中にも、重要な意味を持たせてるので見逃せないんすよ。自らの意思で魔法を使うのをやめたり、魔法ってなんなの?って問いかけがあったりするんですよ。
例えばツボが割れたとしたら、魔女は魔法で直せる。魔法が使えない人間には直せない。だからこそ、大切にするのです、こんな感じの問いがある。魔法が万能でないことを示唆してるんですよね。万能じゃないからこそ、生まれる価値があると。
こんな風に魔法回での経験が、人間ドラマにフォーカスした回にもいきてくるわけで。だから見逃せないんです。うーん、おもしろい。おもしろすぎる!
こういう作りをしてるので、おすすめの話は何?って聞かれると実は答えるのが難しいんすよ(笑)
上記の長門かよこちゃんの話はそれだけ見ても名作だし伝わるものがあると思います。ただ、時系列を共有してると、伝わり方がまったく違うと思うんですよね。
実際の人生と同じく、連続してるんです。だから1番のオススメは全部見て!しかない(笑)
ちょっと好みに合わない回も、それがあるから全体が生きてくる的な…なんかそういうところDJと似てるんですね。捨て曲なんてない。
注:DJはこんな風にステージ前に出て拳をあげたりしません
今日は日曜。20年前はおジャ魔女どれみが毎週放送されて、当時の女児たちはここまで深く考えずともなんとなく見てて、夢中になって。
大人になった時にこんな風にわざわざ言語化しなくても、心の中に残ってるんだなぁと思うと、思わず語らずにはいられないわけですよ。
そりゃ映画のラストでマジカルステージで願った魔法が「どれみちゃんにお礼が言いたい」になるわけだよ!!!!(見てない人すいません)
「どれみちゃんにお礼が言いたい」
映画「魔女見習いをさがして」にはどれみちゃんたちが主役ではありません。おジャ魔女どれみを見てた子供たちが大人になって…という話です。
この映画に感動して、主人公の3人の気持ちが「どれみちゃんにお礼が言いたい」に至った理由を知りたくて…
うん、これは知らないといけない気がする!と、全201話、4年にも渡る超大作を見始めた。で、少しだけわかってきた気がする。わかってきた気がするよ。
でもまだ第3期「もーっと!」の途中であるという事実…まだまだここから語れることはありそうです。楽しみでしかない。
今日は2020年の12月20日。今回取り上げた長門かよこちゃんが学校に行けた回が放送されたのが2001年の12月23日。週単位の感覚でいくと、ちょうど19年前です。
本当はシリーズ全部見てから何かしらの感想を書こうと思ってたけど、あまりにも長門かよこちゃん回に感動したので19年目の記念にこの記事を書いておきます。ファンの人に届いたら連絡お待ちしております。
マジカルステージ…
「どれみちゃんを語れる友達がほしい…!」
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