見出し画像

【感想】ミスリード注意!騙されること間違いなしの館シリーズ第6作

『黒猫館の殺人』
綾辻行人
講談社文庫



綾辻行人さんの館シリーズを1作目から読み始めて、ついに6冊目までやってきました。

館シリーズとは中村青司という名の風変わりな建築家が建てた館が、殺人事件の舞台となっているシリーズだ。

彼が設計する館には、秘密の部屋や隠し通路など必ずからくりが隠されている。

今回のストーリーをざっと説明すると、

火事に巻き込まれ記憶を無くした老人・鮎田冬馬が、自身の記憶を取り戻すために推理作家である鹿谷門実に協力を依頼する。

唯一の手がかりである鮎田氏の手記には黒猫館で起きた殺人事件の詳細が書かれていた。

真実を求めて、一同は黒猫館があるという北海道へと向かう。

そこで明らかになる真実とはー



今作は現在と過去のパートが交互に書かれている。

過去のパートは鮎田氏の手記を読む形になっていて、注意深く読み進めれば読者にも謎が解ける仕様になっている。

手記にはには綾辻さんから読者へこんなメッセージが。

この手記を起こすに当たってまず、記述者である私こと鮎田冬馬は、ここに如何なる虚偽の記述も挟まぬ事を、他ならぬ私自身に誓っておくことにしよう。

(本文p20より引用)


こうやって読者と謎解き合戦をするお茶目な綾辻さん。

最高に好き!大好き!


余談ですが、

最近の綾辻行人さんはモルカーが大好きで、Twitterでよく写真をアップしている。

あまりにも好きすぎてモルカーのツイートばかりになっていた時期も。

ご本人も少し気にされていたようで、フォロワーに「モルカーやめた方がいい?」とアンケートを取っていました。


え?何で?やめないで。

もちろん、続けて欲しい方に票を入れました。

だって私はそんなお茶目な綾辻行人さんが大好きだから!




以下ネタバレ含みます。
未読の方はご注意ください。






私はミステリを読む時、登場人物たちと一緒に謎解きをしている。

そしてミスリードにまんまとハマり、盛大に騙されるのが大好き。


さすが綾辻さん。
今回もその期待を裏切らない。

ある程度の読者が八十パーセントまでは見抜けるかもしれないが、問題は残りの二十パーセントにこそありますぞ、という。この認識に今も大きな変わりはない。

(新装改訂版あとがきp417より引用)

あとがきでこのように語っていた綾辻さん。

まさに彼の狙い通りの結果となりました。



物語の謎の一つであった鮎田氏の正体。

大体の読者は途中で正体に気づいたはず。

もちろん私も気づき、そして調子に乗った。


今回の謎、楽勝じゃん!と。


そんなわけなかった。


嘘偽りが書かれていないという鮎田氏の手記。

物語の最後で答え合わせのように鹿谷門実が手記の違和感を説明してくれている。

私が気づいたのは1つだった。


そう、たった一つ。


私にわかったのは、パトカーの回転ライトが赤と青の光だった件。


海外ドラマ、特にFBI関係が大好きな私はすぐにピン!ときた。

これは海外だ!と。


しかし、舞台は北海道。
海外なはずがない。


しかし、私は産まれてこの方一度も北海道に行ったことがない。

だから北海道のパトカーはランプがちがうのかな?と納得してしまった。


うんうん、
そんなわけない。


沖縄へ行くのにパスポートがいる、
と嘘をつかれて信じた時の事を思い出した。


人間の思い込みとは怖いもので、自分の都合のいいように解釈してしまう。

私は自分自身にも騙されてしまったようだ。


今までの作品に比べると館のインパクトは小さかったが、手記を読むことで謎解きをするシステムがとても面白かった。

また、黒猫館のモチーフとなった不思議の国のアリス。

アリスを題材にした物語はたくさんあるし、アリス自体の話も何となく覚えている。

けれど、よくよく考えてみると原作を読んだことがないことに気がついた。

そしてその続編である「鏡の国のアリス」。

私はこの本の存在を知らなかった。


なんと読書好きとしてあるまじき失態!


もちろんすぐに購入し、
積んだ。


また読まなければならない本が増えてしまった。

幸せ。

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?