【読書感想文】ノーベル賞・科学者が教える「自分力」の磨き方
故・益川敏英教授の世界
再び故・益川敏英教授の著作を。
先日から関連図書を読み漁っているのだが、知れば知るほど著者、著作、そして物理学に惹かれていく💥
私が教授を知ったのが訃報だというのが悔しい。
生前のご活躍を後から追いかける形になってしまった。
しかし、それでもご縁があり、夢中になれる世界を見せてくださったことに感謝を込めて感想文を書く。
奇人?変人?研究者の日常と私たちの人生観
本作は教授の経験や逸話を交えながら、読者に人生観を刷新する語りかけるような一冊だ。
例えば、湯川秀樹教授の葬儀で起こった摩訶不思議なやりとり。
当時、益川先生は湯川教授と同じ研究室に所属していたため、葬儀の手伝いをすることになった。
諸々一段落したとき、同様に手伝いをしていた他分野の研究者から「あの数式はどうやって証明しているのか?」と質問された。
すると先生は懇切丁寧に説明を始め、さらに他の研究者も参加して、議論が白熱したという。
仮にも人の葬儀で…と言いつつも、普段は交わらない分野の研究者が一堂に会する機会だったので刺激的だったらしい。
「天国の湯川先生も喜んでいてくれるような気がした」
この一行に、益川先生のお人柄がにじみ出ていて感動した😹
そして、益川先生がこの経験談から導き出した結論が、
"同じ世界、同じ気質、同じ所属の人と一緒にいるのは居心地がよいが、それだけでは新しい発想や見識は広がっていかない"
ということ。
理論物理学という、究極に「思考」を突き詰める仕事をしている先生。
他の著書でも"一つのことに没頭する力"を「才能」だと評価している。
でも一方で、可能な限り選択肢を広げ、その中で自分にとってふさわしいものを能動的に選ぶことこそ人生を豊かにする秘訣だと定義している。
(本文中では実際に物理学や数学の先行研究を引用して自論を補強している。
私は研究者のこういう実直さを敬愛している。)
凡人の私たちが学べること
さて、自分の人生に当てはめてみたときどう考えるだろう?
私が長年、続けてきた日本文学にまつわるあれこれ。
嬉しいことに、益川先生も哲学書や文学書を読み「意味がわからない」と思ったと仰っている🤣
でも、そこから自分なりに思考し、自分の分野と結びつけることで理解できるようになったという。
「先人の思考を知ることは、自分の思考を言葉にして、形のないものに形を与えることに繋がります。」
私も今まで全く触れてこなかった物理学という世界から、たくさん興味深い知識や思考を与えられた。
私が読書に求めるものは共感よりも、突飛な発想や私一人の力では得られない何かを得ること。
そして質の高い読書体験は常に新奇性があり、自己投影、自己分析する機会を設けさせてくれる。
これからも得体の知れなさ、未知の領域に触れていきたいと思う。