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読書記録「ナチが愛した二重スパイ 英国諜報員「ジグザグ」の戦争」ベン・マッキンタイアー、高儀進訳
白水社
2009
二重スパイ、ジグザグことエディ・チャップマンについての一冊。
翻訳がちょっと古くていかにも直訳であるのと、チャップマンという主人公が掴みにくい人物なのとで、面白みにかけた印象。
ロンドンの大悪党だったが戦時中は英国に忠実なスパイとなり、戦争が終わればまた元の世界に戻ってゆく。まさにジグザグといえる人生。
チャップマンは直接会った人でなければ分からない魅力があるのではないだろうか。英国側のスパイマスターたちも何故だか惹かれていったような様子がある。
しかし読み手にはそれが伝わらないので、摩訶不思議な掴みどころのない人物で終わってしまう。
チャップマンがいつから英国側のために働くと決めていたのかは分からない。
ジャージー島で捕まり、そこがドイツ軍に占領されたためドイツ側の捕虜となり、フランスに送られ、そこでスパイとなることを申し出る。
数か国語をマスターし、教養がある風に装うことができ、手先も起用、度胸もあり、流れるように嘘をつく。まさにスパイ向きだが、ムラっ気もあり、真意はどこにあるのか掴むことは不可能だろう。
彼が心から慕っていたのは戦時中は名前も素性も知らなかった上司のドイツ人、フォン・グレーニングだったというのだけは確かだろう。
余談だが、物語にもちょっとだけ登場したジャスパー・マスキリンの映画が今から待ちきれない。