石川達三「生きている兵隊」
以下は、8年前に書いたものであることをお断りします。
作者紹介、内容紹介、論評と分けて掲載してゆきます。
石川達三(1905-1985)と言う作家を知っている人は、今では多くはないであろう。
今年[2015年]は石川の死後丁度30年である。同年生まれの著名人には、円地文子、片岡鞠子、水谷八重子等がいる。
私がこの作家のものを読んだという確かな記憶を持っているのは、「蒼氓」と「風にそよぐ葦」である。高校在学中に学校の図書館で読んだ。その頃の朝日新聞に「人間の壁」が連載されていたが、新聞小説なので時折筋を追う程度の読み方に終わった。
「生きている兵隊」は、読んでいるはずだがあまり印象に残っていない。
今回「麦と兵隊」を取り上げたので、“好一対”をなし昔から「麦と兵隊」との比較で議論されることの多かった「生きている兵隊」をじっくり読んでみた。その結果は、後述の「作品内容の紹介」に示しておく。
社会派、常識家、正義派、健康優良児とも称される石川達三。
私はその社会派、正義派に連なる作品が好きであった。
前述した、「蒼氓」と「風にそよぐ葦」の他に、映画化された「金環蝕」である。
同時に、「青春の蹉跌」や「四十八歳の抵抗」等も面白く読んだ。
社会派と世間に言われることに関して、石川自身の次の言葉を参考までに記す。
「作家は常に批判するものでなくてはならないし、時代の良心でありたいとも思う。
浮薄な時代の風潮に便乗して、あるいは先回りして、流行歌を歌うようにして原稿稼ぎをするような人間を、私は作家とは思わない(「流れゆく日々」)
「過去の作品の大部分は、現実の社会で生起したある事象、ある事件に取材して、その社会的な、政治的な、人生的な意味を追及し批判し抗議する、と言う風なものであった」
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