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【小説】せきれいの影

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古き良き昭和と近未来日本が共存しているような世界のお話です。
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【小説】せきれいの影|序

ゆうやけに こうべをたれる はるもみじ 室井弘明 「なんだ、お前、やればできるべや」 「…

【小説】せきれいの影|1話

 二〇六二年の冬のはじめ、三十一歳の誕生日を迎えた。  かといって祝い事をするでもなく、…

【小説】せきれいの影|2話

 初冬の朝の薄明りのなかで、女がしりもちをついていた。  高価そうなカメラを右手に持って…

【小説】せきれいの影|3話

「西野谷誠一君の起業を祝しまして!」    乾杯! とジョッキを突き合せた。 「いやあ、奢…

【小説】せきれいの影|4話

――木戸ちゃん、大変だったね ――警察もそこまでする必要ないのに ――本当だよ  ムロア…

【小説】せきれいの影|5話

 日一日と寒さが厳しくなる。  それに、遅い日の出に早すぎる日の入り。    この時期は疲…

【小説】せきれいの影|6話

 案の定、具合の悪い日が続いている。  今年の年末年始も、休みは大晦日と三が日だけだ。    まあ、四日も休めるだけありがたい話ではある。  なにせ上司は元旦しか休みがない。  まあ、あいつのことは大して好きじゃないからいいのだけど。    そんなことを、隣人とテキストでやり取りしていた。 ――てなわけでさ、しばらくはあんまり夜遅くまで通信できないかもしれない ――もうすぐ0時だけど大丈夫? ――大丈夫だよ ――むしろ、少しはコンピュータやらないと仕事と寝ることぐらいし

【小説】せきれいの影|7話

 神社は参拝客で賑わっている。  そこかしこから、白い吐息や出店からでる排煙やらがもうも…