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【旅行記】青春18きっぷで行く瀬戸内周遊旅行7泊8日(前半)
今回の旅について
「青春18きっぷ」とは
「青春18きっぷ」という切符がある。
冬・春・夏の限定期間において、JRの普通列車が、乗り放題になるお買い得な切符だ。鉄オタには説明不要だろうけど、12000円で5日間分使える。
5日間を分割して使ってもよいし、始発から終電まで1日かけて遠方へ行く猛者もいるという。しかし、何と言っても、この切符の一番の醍醐味は、安く、ゆっくり旅を味わえるということだろう。
老若男女誰でも買えるのに「青春」「18」と仰々しい名称がつけられているのも、学生の夏休みのようなゆっくりとした時間の流れを体感してもらいたいというJR側の粋な計らいを感じる。
舞台は「瀬戸内」
この旅行は、大学生活最後の旅行だった。
新幹線やフェリーで素通りしたことはあったにせよ中国・四国地方は行ったことのない地方だったし、18きっぷで安く行くなら今が好機だろうということで、即決定した。
都市好きの私にとっては、札仙広福の一角・広島や政令指定都市の岡山は外しがたい。四国の二大都市である松山・高松も抑えておこう、ということで、7泊8日かけて瀬戸内の都市や文化遺産を巡り、鉄道でじっくり瀬戸内海の眺めを楽しむという旅の基本方針が固まった。
18きっぷの特性を考慮した旅のルート
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青春18きっぷを使って旅行をする以上、1日のJR運賃が2400円を切ってしまっては、損になってしまう。ここに気をつけて旅行をすると、1日3時間くらいは電車に揺られる必要がでてくる。それより短い時間だと2400円を越さない可能性が高くなる。
よって、1日目名古屋を出発して、姫路に宿泊。2日目は岡山県を素通りして、広島県の尾道へ。3日目は、呉で途中下車し、広島を通り越して宮島フェリー(唯一18切符で乗れる航路)に乗り、広島駅に戻る。といった、独特の旅程が出来上がった。
1日目(名古屋→姫路)
2024年3月2日(土)、朝8時に名古屋駅から新快速に乗り、雪がまだ残る米原で関西地区の新快速に乗り換えると、姫路までノンストップで進む。乗り換えの多くなりがちな18きっぷ電車の旅行で、新快速はとても助かる。
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12時過ぎに姫路駅に到着。人口52万人、播磨地方の最大都市で世界遺産を抱える街。行ってみたかった場所の一つだ。
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姫路駅を出るとすぐさま視線の先に姫路城が見え、訪問者に鮮烈な印象を与える。私の生まれ育った掛川もお城はあるが、駅から出ても建物に遮られて全く城の姿が見えない。天守閣まで一切遮る物のないメインストリートは都市計画の成功例といって差し支えないだろう。
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姫路城は、白鷺城の異名で知られ、白鷺を彷彿とさせる白を基調とした外観の天守閣が特徴である。
圧倒的な優美さが池田輝政の築城した姿そのままに現存しており、国宝やユネスコ世界文化遺産に指定されていることも当然としか言いようがない。
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「白い不死鳥」と呼ばれているらしい。
実際に近づいてい見ると、もともと軍事施設なだけあって、城が近くに見えていても、なかなか近づくことができない。やっと近づくと、威圧感を感じるほどの迫力を感じた。
天守の最上階からは、これまで歩いてきた駅前通りが一望でき、遠くには播磨灘と臨海の工業地帯も観ることができた。
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その後、時間が余ったので、城の北にある兵庫県立歴史博物館を見物した。アーケード商店街を抜けて駅前に戻ると、兵庫県立大学(姫路にキャンパスがある)に通う知り合いオススメのラーメン屋で夕食を取り、この日はカプセルホテルに泊まった。
2日目(→尾道)
朝8時に姫路駅を出発し、9時半頃に岡山に到着。岡山は最終日に行くが、今回は乗り換えるだけだ。山陽本線を西進し、11時11分尾道に到着。瀬戸内を代表する観光地だ。
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駅近にあるホテルに一旦荷物を預け、レトロな商店街をくぐり抜けて、千光寺山へ向かう。ロープウェーで行くこともできるが、今回は運休中で使えなかった(地元の人に聞くと桜の時期で大混雑する前のメンテナンス中らしい)。
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道中には見物箇所も沢山あって、全く退屈しない。
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頂上までたどり着くと、展望台があり、尾道海道と対岸の四国へ連なる島々がよく見える。穏やかな海で、中世から瀬戸内の物資輸送の中継港として繁栄していたのもよくわかる地形である。
売店で広島レモンのソフトクリームを堪能した。大学生と思しきカップルが多くてげんなりしたのは内緒。
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尾道市立美術館で真珠のネックレスの展示を見たり、志賀直哉の旧居を訪れれたり、尾道ラーメンを食べたりして、2日目はホテルに戻った。
穏やかな1日なようだが、靴下を忘れたことに気づき、急遽商店街で靴下を購入するハプニングも起こったことも追記しておく。
3日目(→呉・宮島)
早朝、尾道を立つ去り際、朝焼けの海が綺麗だった。海が見える街で育ったわけではないので、こうした光景にハッと目を奪われてしまう。
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朝7時に尾道を出てまもなく、糸崎駅と三原駅で乗り換える。通勤ラッシュ時で、通勤・通学する客で混んでいた。毎日利用する人には何てことのない日常的な光景なのかもしれないけど、車窓から見える景色はもの凄く美しい。
三原駅から西に行くには、内陸の山陽本線と海沿いの呉線がある。山陽本線のほうが速いのだが、あえて海沿いの呉線に乗ったのはこの海沿いの景色を楽しむためだった。地図で見て景色良さそうだな~と思っていたけど、実際に行ったら大当たりで、いつ見ても写真に撮りたくなる景色ばかりであった。
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2時間ほど穏やかな瀬戸内海を眺めながら電車に揺られ、9時17分に呉駅に到着。
呉は、軍港都市として知られる人口20万人程の都市だ。ここに来たのは、他でもない、大和ミュージアムを見学するためだ。
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大和ミュージアムの目玉は、10分の1スケールの戦艦大和の模型だ。これ作るのに2億円かかったらしい。甲板の板も、実際の見た目に近づけるよう細かい木目の木材が使われている。
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中の展示も軍艦の建造過程や戦争の悲惨さを伝える内容で力が入っている。
特攻隊員の言葉「日本は進歩と言うことを軽んじ過ぎた。私的な潔癖や徳義にこだわって、本当の進歩を忘れていた。敗れて目覚める、それ以外にどうして日本が救われるか。」が重く沁みる。
今の日本は、本当に新生したのだろうか。隣国が戦争がはじまって隠れていた残虐性が突然露わになったり、個人の尊厳を傷つけるような体質の組織文化が根強く残存していたり、そうしたことは全然あるんじゃないだろうか。
お昼に海軍カレーを食べて、宮島に向かう。
広島で降りないのは、日本で唯一青春18きっぷで乗れる航路、JR西日本宮島フェリーに乗るためである。13時38分、宮島口駅で降りると、18きっぷと入島料100円を払って宮島フェリーに乗船。世界文化遺産の厳島神社へ向かう。
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宮島に上陸すると、すぐさま大量の修学旅行客に遭遇。これが最近話題のオーバーツーリズムか…。有名な厳島神社の鳥居もこのとおり長者の列が。流石にこの行列に並ぶのはキツかったのでやめた。
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あと思ったのは、ゴミ箱の少なさ。入島料を取っているけど、そういう整備はしていないんだ。食べ歩き買ったけど、捨てるとこなくて萎えた。
原因は鹿がゴミ箱を漁ってしまうかららしい。確かに、鹿が人間の持っている紙やら切符を食べている光景をよく見かけた。私も来て早々案内マップを食べられてしまった。
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人が多くて、宮島では疲れてしまった。
何とか購入したもみじ饅頭を腹に詰め込んで、逃げるように島を旅立つと、広島駅北口近くのホテルに帰った。
4日目(→広島)
広島で宿泊したトラストホテルは、駅近で2泊6300円朝食付きという破格の安さのホテルだった。半個室でプライバシーは犠牲になるが、朝ごはんはバイキング形式でとても贅沢な気分になった。
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味噌汁があるだけでQOL上がる
歩いて広島駅に行き、広電でさっそく広島ドームに向かう。今日は18きっぷは使わず、広島を一日満喫する。
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雨の日の広島ドーム。鬱々とした雨の日も、戦禍の廃墟にはかえって似合っている。G7で注目度が高まったからか、外国人も目立つ。この旅3回目の世界文化遺産である。
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その後、広島平和記念資料館を見学した。核兵器開発の歴史から、昭和20年の広島に生きていた学生の日記まで、多角的な視点から戦争と平和について考えさせられる施設だった。
相変わらずの雨の中、西広島駅近くのお好み焼き屋・ひで家へ。バリバリした麺が特徴のお好み焼きが目の前で焼かれて提供されて、広島まで来てでも味わう価値あるな…と感動した
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お好み焼きで腹を満たして西広島駅周辺を散策することに。西広島駅付近の己斐地区は、児童書「ズッコケ三人組」シリーズの舞台ミドリ市花山町のモデルである。私にとっては、架空地図を描くきっかけになった本でもあるので、一度訪れておきたかったのだ。
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己斐を散策し終わると、広電で中心部に戻った。
被爆建物でもある旧日本銀行広島支店へ行くと、「地歴ウォーク」という如何にも私好みのイベントが催されていた。広島の都市開発の歴史とか面白い写真が沢山展示されていた。
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その後、薬研堀や八丁堀、紙屋町といった広島繁華街地区を散策。人口120万人を誇る中・四国エリア最大都市だけあって、中心部の街並みは大都会そのものであった。
周辺が山がちで三角州上の平地に都市が凝縮している感じ。100万都市ではあるものの、地下鉄はなく、路面電車網が充実している点も「広島らしさ」を構成する重要な要素なのだろう。
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18きっぷを使わず、のんびり広島を散策しようと思っていたものの、こうして広島の主要な名所を巡っているうちに、歩き疲れて4日目は終了。
今日はまた同じホテルに連泊して、明日はフェリーで四国へ向かうつもりだ。
文量が長くなってしまったので、愛媛や香川、岡山に行った5~8日目は、後編に分けて書こうと思う。