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通貨「円」の将来を考える。

今日は通貨について、考えを巡らせてみようかと思います。
通貨「円」についての捉え方の変化が自分の中にありましたので、その辺りを追いながら、皆さんに考えを深めてもらったら、嬉しく思います。
(※なお、ここからはあくまで個人的な意見であり、ここに出てくる米ドルは一応の仮として引き合いに出していますので、ご了承ください。)

香港旅行での体験〜通貨について

今考えれば印象的なのですが、数年前、香港・マカオ旅行をした時のこと。この旅行ではツアーに参加をして、コーディネーターが付いていました。やはり頼りますよね。「どんなお店がある?」とか、「何を食べるのがいい?」とか。そして、どんどんリクエストをして、店を取ってもらったりしていました。(かなり商売上手な人で、面白かった)

ここで取引が発生するわけです。手数料を支払います。香港では、当然「香港ドル」を使いますし、それ以外には考えていませんでした。

しかし、そのコーディネーターはこう言いました。
「円で支払いをしてくれたら、付加サービスをするよ」と。

なるほど。彼は香港ドルよりも円の方に信用・価値を持っていたのです。
私は別に気にせず(多少は為替相場は気にしてはいたが・・)「円」で支払いました。

数年前はそんなに気にする体験ではありませんでしたが、今後、このような取引が日本でもリアルになるのかもしれないと思い始めました。きっかけは新型コロナでの市場の動きを見てきたことです。

日本国内で「円じゃなく、ドルで支払って!」という取引が現実になる?

コロナショック下での通貨

今回のコロナショックでは、株式市場などありとあらゆるマーケットがパニックを受けて、その過程を具に見てきました(今も見ています)。

まず起こったことは、現金化の動きです。ありとあらゆる資産を投げ売りして、現金に変える動きが凄まじい勢いで襲ってきました。キャッシュイズキング。取引には「流動性」は必要です。つまりは、「売り」と「買い」の双方が必要なのです。しかし、「売り」一辺倒のマーケット。取引が成立しない恐れがあります。流動性枯渇の懸念です。流動性が枯渇をすると、どうなるかというと、最悪、金融危機です。

そこで、各中央銀行はざっくりと捉えると、矢継ぎ早に通貨をマーケットに供給して、流動性を保ちました。金融危機は避けるため、ありとあらゆる危機リスクを潰していったのです。形振り構わずな必死の戦いであると日々マーケットを見ていました。その過程の中で、流動性供給で、流通通貨を増やしていきました。日銀の動きも同じでした。(日銀は株式市場で大規模なETF買いをも実施していました)

そして、今度は実体経済の下支えのため、各国財政出動です。一時的に需要が蒸発してしまったからです。さて、「どうお金を調達するのか」ですが、債券を発行する訳です。(財政規律に徹底的に厳しいドイツまで、例外的に財政規律を緩めていました)日本も慢性的な財政赤字ですが、日本国債を発行した訳です。しかし、大規模な債券の買い手はいるのかというと、心もとない。(もしいない場合は、利率をあげるしかない、調達コスト増大です)

そこで、中央銀行はどうしたかというと一部、債券を引き受けて、調達コストを下げました。ここでも通貨を供給しています。「財政ファイナンス」とも取れる動きです。どうにかこうにか調達をして、様々な財政政策を行う訳です。定額給付金・持続化給付金の財源になっていきました。

このような動向を探っていくと分かるのですが、通貨の流通量が尋常じゃない。空前の金融緩和を行ないました。

そこから派生することは、ざっくり言うと、通貨の価値が下がるということも意味します。通貨価値とは相対的なものです。「円」と「米ドル」、「円」と「ユーロ」などの比較で為替が決まってきます。

今の状況を分析すると、ほぼ全ての通貨の流通量は空前絶後ですので、相対的に見たときには「円」のみが価値を下げているわけではないので、そこは念頭に置いておく必要はあります。

しかしです。コロナショックで実施した空前の金融緩和は何を招く可能性があるか。バブルですね。これだけマーケットに通貨があれば、さらにリスクオンの時に資産にお金が向かうかもしれません。(事実、日本のバブルは、プラザ合意も関連して、金融緩和の引き締めが遅れたことに端を発しています。)

そういった意味からも「出口」が必要です。つまりは、どこかの時点で、金融引き締めを行わなければならないことを意味します。

問題は、各中央銀行はそれが適切にできるのかに焦点が移るでしょう。それぞれの中央銀行の対応によって、相対的な通貨価値が変わってきます。引き締めを行わなければ、通貨の価値が下がっていきます。

アフターコロナで日銀は金融引き締めができるのか?

では、日銀が引き締めができるのか、出口があるのか。これからの日銀の動きは相当難しいだろうなと個人的に思いはじめました。

「アベノミクス」の3本の矢を覚えていますか?
(1)金融緩和
(2)財政政策強化
(3)成長戦略の実行 です。

基本的にはコロナショックの前から、緩和してきていました。さらに今はこの状態です。財政赤字も膨大です。これから、少子高齢化が進み、支出が増えるこそすれ、収入は心許なくなる。永遠に借金を重ねていくのか?

おそらく、(緩和気味ではありましたが)FRB・ECBなどは政策対応の余力があるように考えています。つまりは日銀と相対的に引き締める余地があるということです。

もし、FRB・ECBが出口に向かいはじめたらと考えると、私は日本がそこについていくのは難しいというか、ハードルが高すぎるように思えてなりません。そうなると、円の価値が相対的にどんどん下がっていきます。

経済学の教科書で、1番に書いてること。「通貨量を増やしたら、インフレが起きる」というものです。(第一次世界大戦後のドイツ)

「円」の常識は変わるかもしれない〜米ドルを欲しがる未来?

思考を進めていくと、そもそも「円」を将来信用できるのか?価値を保つことができるのか?という疑問が湧いてきます。円の価値が下がるのですから、今持っている1万円の価値も変わります。(戦前の1円は、当然今の1円とは価値が異なります)

最初の香港の例に戻って考えていきましょう。
コーディネーターは「香港ドル」よりも「円」を欲しがっていました。「円」に価値を見出して、信用していたからです。

今、当たり前のように「円」で国内取引をしていますが、よくよく考えれば、香港で体験した内容のようなことが起こっても不思議ではないよなと考えるに至っています。

「円じゃなくて、米ドルで支払え!」
国内取引でもこんな時代が日本にも来るのでしょうか?


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