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風鈴に耳をすませて #虎吉の交流部屋初企画

夜風が、すぃ、と網戸から入り込む。

もう少しで満月を迎える月の、眠たげな光がベランダにこぼれて、ゆるやかな夜を作っている。

風にのって、風鈴の音色が聞こえる。

先月の終わり頃から、エアコンを消した夕方や夜に窓を開けると、チリリン、と軽やかな音が聞こえるのだ。

涼やかで心地よい、心が和らぐ音色。

先日ホームセンターで、親の買い物に退屈している子どもが、売られている風鈴にさーっと手をなびかせて遊んでいた。
まわりに響くほどの大きな音色は困りものだが、それを見て、小さい頃に風鈴が好きだったことを思い出した。

水色に透き通る、大きな丸い風鈴。
買ってもらったそれを、父に窓辺に吊してもらった。
垂れた紐には飾りとして青いお魚がついていて、ゆれると、お魚が青空を泳いでいるみたいだった。

高く伸びやかな音をいつまでも聞いていたくて、「風さん、たくさん吹いて」とお願いしながら、いつまでも飽きずに見上げていた。

大人になって訪れた神社では、数え切れないくらいの色とりどりの風鈴が、ひとつの所に集まって飾られていて、それぞれが陽の光を受けて輝く姿は、暑さを忘れてしまうほどの美しさだった。

ひとつひとつの風鈴をのぞき込むと、その中に映る青空ごと綺麗で、連なる丸い形も可愛らしく、風鈴は見た目だけでもこんなに楽しめるものなのだと感動した。



私たちが、心の声を文字やメロディで表すように、
風が、私たちに聞こえない声を、風鈴の音で表現していたら......。

チリン

“お元気ですか?”

チリン、チリリン

“今日も、あついですね”

チリーン、チリリン

“ゆるーく、のんびりしましょう”


なんて、風との会話を想像してみるのも楽しいかもしれない。


窓の外の月が、南の空をゆっくりと横切って低くなっている。

まだまだ続く夏の夜、こんな風に想いを頭の中で膨らませて、届けた文章から涼しい音色を届けることができたら嬉しい。

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