今朝の星々 -3つの光-
早朝にぱちりと目が覚めた。
久しぶりに金星を見たくなって、窓を開ける。
夜の氷が溶けゆく空に、刺すようなするどい輝きを放つ金星の姿があった。
いつ見ても変わらない、黄金色の美しい輝き。
近くには春の乙女星スピカが、ほの白く灯っている。
眩いヴィーナス“金星”と、清らかな乙女“スピカ”。
対照的なふたつの光にそれぞれ女性像を描きつつ、金星の下の方に目線を移していく。
次にさがしたいのは、月。
細い月、金星、そしてスピカが、この空で共演するという。
調べると、今朝の月齢は26。
三日月くらいの細さを想像する。
金星のすぐ下にはお隣の家の屋根があって、空の一部が見えなくなっていた。
多分このあたりに、と思いながらひょいと踵を浮かせると、屋根に隠れていた月がひょこりと姿を見せた。
ピンキーリングのようにころんとした、輪郭の細いお月さま。
まだ空が暗いため、地球の影の光、“地球照”もはっきりと見える。
空の大地でそっと瞼をひらいた月の花、
朝日を呼び覚ます金星の鈴、
夜の最後の氷が溶けて、スピカの朝露がきらめく。
3つの光とともに、夜から朝へ。
紺青色の空が透き通って、東の空が黄色に、そして橙色に染まりはじめた。
今日も空に、はじまりの挨拶をする。