November diary ~風と遊んだはなし~
2024.11.30
又三郎が呼んでいる。
「こっちだよ! ほら、こっちだよ!」
わくわくした気持ちを抑えきれずに、私は小走りで声のする方に向かう。
着いた場所は、落ち葉たちのお祭り会場。
広い広い原っぱに、色も形もさまざまな葉っぱたちの顔、顔、顔。
そこら中の葉っぱたちがこの会場に集まって、みな興奮した様子でおしゃべりをしている。
「では、最後の秋祭りを開催します!」
挨拶を終えた又三郎がていねいにおじぎをする。そして顔を上げると、自分のマントの端をくいっとつまんだ。
又三郎がマントを力強くひるがえす。
すると、原っぱの中央に大きな大きな風が巻き起こった。
葉っぱたちがそれを合図に一斉に走り出す。
広い原っぱ全体をたくさんの葉っぱたちが縦横無尽に駆けまわり、あっちでもこっちでもお祭りさわぎ。
少し遠いところからその様子を眺めていた人間の子どもが、僕も!わたしも!と駆けよった。
脱いだ上着を片手で振り回しながら自分たちも追いかけっこを始める。
走り回る葉っぱと子どもたち。
楽しそうな笑い声。
風がその声を吹き散らし、新たな笑い声を運ぶ。
「まだまだいくよ!」
又三郎がマントを振る。ふたたび大きな風が巻き起こる。
くるくるくるり、ぱっぱっぱ。
ぱっぱっぱっぱ、くるくるり。
青空の下でカラフルな葉っぱたちのダンス。
そのへんてこな踊りに私も楽しくなって、大人なのに両腕を広げて原っぱを走ってみた。おでこに当たる風が気持ちいい。
原っぱの風は空まで届き、たくさんの雲たちが次から次へと面白い形に変わって会場はさらに盛り上がる。
集まる雲たちに隠されまいと、太陽がますます元気にかがやいてお天気も絶好調。
乱れた髪を整えながら会場の出口へ向かう私に、ぶわぁっと追い風が吹いた。
葉っぱたちが「またね」と足下を駆けていき、私の何倍もの高さのある大きな木が秋色に染まった枝を「さよなら」と揺らす。
フィナーレの葉っぱ吹雪が、光を受けてきらめきながら頭上を舞っていた。
秋からの贈り物を抱きしめて、私は冬へと歩き出す。
写真もよかったら🍂