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【海外駐在】異文化理解。 日本人が海外で活躍するということ。
海外駐在において、日本人がGlobal Managerとして現地で貢献するのに、とても大切な事に異文化への理解ということが上げられる。今日は、そのことについて書いてみたい。
日本人は、世界から見るとかなり異端児である
日本で生まれ育った我々は、あまり意識していないが、世界的にみると、日本はかなり異端な国である。2,000年以上の独自の極めて長い歴史を持ち、その間ずっと独立国であり、他国から侵略を受けるとか、別の国と一緒になっていた時期があるとか、全くない。2,000年にわたって純正培養された「日本」という極めて、独自の国なのである。民族的にもほぼバリエーションがなく、98%が「日本人」に分類され、言葉も「日本語」ほぼ一種類しか存在しない。
世界的にみると、欧州、南米、アフリカなどは、色々な国が統廃合された中で、今日の姿になっており、人種や宗教などがある程度混ざり合っている。中国やロシア及びその周辺の国なども、多数民族の国であり国内に複数の民族や言葉が存在する、中国やロシアでは100種類以上の言語が使われている。アジアのほとんどの国は、欧州の植民地経験をしており、加えて中華人の大量流入があったりと、多様な文化に触れた経験を持っている。
こうしてみると、日本は世界の中で最も純正培養された、異端な国の1つと言える。その日本人が世界で活躍することを目指すときには、自分たちが世界の中でかなりな異端児であるという認識を、まずはしっかりと持つことが重要である。
まず理解に徹し、そして理解される
初めて海外駐在をして、会社やTeamを任された時に、早速日本のやり方をそのまま導入しようとするのは、最も行ってはいけないことである。なぜなら、我々は異端児なのだから。まずは、その現地会社のやり方、もっと適切にいうと、その国の文化や価値観というものを学ぶ必要があるのである。
着任したての人が、こられの業務A/B/Cに関しては、日本のやり方の方が明らかに効率がよいからと、現地の社員に矢継ぎ早に業務フローの変更をお願いするようなパターンをよく見かける。だいたいのケースにおいては、現地社員のリアクションは極めて悪く、なかなか変更が進まない。場合によってはオリジナルのまま業務がそのまま継続されることも多い。
それをうけて、くだんの初心者駐在員は、この国の社員は全く理解ができないと文句を言うようになる。現地社員側も、今度の駐在員は無礼なので、話しを聞く気にもなれないとなり、厳しい駐在員生活の船出となる。初めての駐在、あるあるストーリーである。
一体どこが悪かったのだろうか。この駐在員には悪気はなかったし、事実としては現地会社の業務フローは日本のそれよりも相当劣っている。しかし、問題は、日本と現地のどちらの業務フローが優れているかではない。
問題点は、この駐在員が、現地の習慣や文化を全く理解しない中、無意識に日本と自分を物事の中心において、現地のやり方に変更を要求したところが、痛いのである。
それぞれの国には、それぞれの国の物事の進め方がある。業務フローに変更を加えるという同じ作業1つをとっても、国によっては、まず、部長に話しを通して、それから課長、担当者と階層順にお願いをする文化のある国。また、国によっては、全く逆階層順が理想であったり。更には、関係者を一度に会して全員いる中で変更することを理想とする国など様々である。厳密にいえば、国だけでなく、その現地会社のやり方というものも関係してくる。
初めて、海外の現地会社に入った場合は、日本や自分中心のものの見方を横において、まずは、その国、現地会社の文化や価値観、現地社員の理解に徹するのがポイントとなる。
「まず理解に徹し、そして理解される」。「7つの習慣」Steven Covey著に出てくる有名なフレーズである。
赴任地が決まったら、その国の歴史、文化、政治、産業、料理、著名人、著名な本や映画、音楽などをなるべく学ぶことである。その国への理解度が高いほど、その国で活躍できる可能性が上がる。
但し、政治や文化の痛いところ(例えば、内戦のこと)などは、現地の人との会話で、自から気安く口にしてはいけない。センシティブな内容に関してはは、礼儀をわきまえ、外国人である我々が軽々しく口にするべきではない。しかし、センシティブな事柄は、その国を理解するのに大切なので、しっかりと学んでおく必要がある。
そして一番大切なのは、その国の言葉を学ぶことである。
外国語を学ぶということは、単に、単語や文法、発音を学ぶということではない。その国の言葉には、その国の文化や価値観などが深く入っており、かりに流暢に話せなくても、外国語を学ぶことにより、その国を深く理解することができる。
ちなみに、私は駐在国の言葉として、中国語とベトナム語を学んだことがある。第二外国語、第三外国語を学ぶことにより、自身の価値観や物の見方が随分と広がった。Global Japaneseとしては、英語が一番大事な言語となるが、更に第二外国語を加えることにより、価値観や文化に対する理解が2軸から3軸へと展開する。機会があれば、是非挑戦したいところである。
10年駐在するくらいの気概で
言語を含め、その国の歴史や文化を深く学ぶには、大切な秘訣がある。それは、赴任した際の初日の自己紹介で、「自分は10年くらいこの国で頑張る予定です」と宣言することである。現地のスタッフ、上司、また、本社の人事などに対して、自分は10年くらいこの国で頑張る、なんなら骨を埋める的な気概を見せることである。(仮に、あまり好みの国でなかったとしても。若しくは、3年程度で駐在期間が終わるのが通例であったとしても。)
駐在員で、現地にとけけめずに失敗するパターンは、腰掛な態度で仕事に向かう人である。腰掛気分でいると、仮にそれを口にださなくても、現地社員は敏感にそれを察する。そして、腰掛気分ですぐ異動するかもと思って生活をしていると、その国の言語、文化、歴史、価値観などへのセンシティビティが下がり、まったく身に付かないということになる。そういう駐在員はかりに何年駐在したとしても、現地の社員、顧客から「お客さん」扱いされ、海外で活躍する日本人には到底なれない。
特に、駐在国の言葉が非英語圏であった場合は、真っ先にその国の言葉の勉強を始めるべきである。言葉は複利で効いてくる、着任してから最初の数ヶ月で基本を学べるかどうかが重要だ。最初に基礎が話せるようになると、駐在時間とともに、その言葉をどんどん話せるようになる。
腰掛気分で駐在をスタートして、文化、習慣を理解せず、言葉も全然話せないまま、駐在期間だけ5年、6年と長くなるのは悲惨である。そんなに長い時間いるのに、現地語の1つも話せない人= 全くこの国に興味がない、この国を愛していない人とみなされてしまう。現地社員、現地の顧客やベンダーからはどんどん疎遠な人となってしまい、本来の仕事能力がいくら高かったとしても、この国で活躍することはまずできない。
効率よく異文化を理解するのに
駐在する国に腰を据えて、言葉も含めてその国を丸ごと理解するのが、海外で日本人が活躍する秘訣だと書いたが、どの国に駐在することになるにせよ、まずは、ビジネスにおける異文化論に目を通しておくのがよい。世の中には優れた人がいるもので、異文化理解に関して、その概要を数時間で学べる優れた書物がある。
駐在する前に目を通して、駐在する際には脇に置いておいて、駐在初期の「なんでこの国の人は、私の思うように動いてくられないのだ。。。」と身悶えする時に、再び読み返すと、本当にこれらの本が意味するところが深く理解でき、優れた本だと納得できると思う。
1つは、「異文化理解論」エリン・メイヤー著。
もう1冊は、「経営戦略としての異文化適応能力」宮森千嘉子、宮林隆 著。
どちらの本もとてもよく書けており、異なる国での異文化コミュニケーションについて体系的に理解できるようになっている。
以下の図は、「経営戦略としての異文化適応力」のweb pageから、私が赴任した国の特徴を比較したものである。
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ホフステートの6次元モデルと言われるものから、「個人主義」「権力格差」「不確実の回避」3項目を、「オーストラリア」「中国」「ベトナム」「日本」で比較してみた。
個人主義
個人主義においては、オーストラリアが個人主義志向が突出しており、中国・ベトナムはその正反対である。例えば、ビジネスにおいて、何か活発な議論を求めて社員を集めてたとして、オーストラリアの場合は、参加者が各々思っていることを、自由に発言するし、対立する意見もよくでる。。中国やベトナムの場合は、まずは、周りの様子に気をくばり、自分の意見よりも、周りの意見に自分を合わせるように調整する。特に力のある人が意見をいった場合、それに対して反対意見はまずでない。
権力格差
オーストラリアとベトナム・中国は権力格差においても大きな差がある。先ほどのべた、何か活発な議論を求めて社員を集めた場合。仮に社長が何かいけてない意見を言った場合、オーストラリアの場合は、あっというまに幾つもの反対意見や対立意見がだされる。社長のメンツを気にする文化はない。一方のベトナム・中国の場合は、社長のメンツを気にして会議室は静かになり、なんとなく、社長のいけてない意見に皆が賛成しているかのようになる。しかし、実際は皆反対意見を持っており、皆の前発言するのは社長のメンツを壊すということで、会議が終わった後に、個々人が社長のところに意見を伝えにいくといた具合である
もし、あなたが、集団主義、権力格差が強い国に駐在して、チームを任される場合。そのチームmeetingにおいては、皆が簡単に思っていることを言わない、ということを前提に丁寧に会議を進める必要がある。ダメな駐在あるあるは、チーム会議において自分の言いたいことを発表して、チームから何も反応がないので、全員同意して理解してくれたと誤解する事である。実際にアクションになった時に、チームから梯子を外されたようになり、落ち込むことになる。
不確実性の回避
これは、もう日本は圧倒的に不確実性、いい加減を嫌う文化である。我々日本人は意識していないもしれないが、世界的にみると、日本は最も不安を感じる民族といってもよい。そのため、詳細な計画を立てることが良いとされ、社会には多くのルールやマニュアルが存在し、リスクを最小限に抑えるようになっている。メリットとして、電車が分単位で運行されたり、コンビニの商品棚が完璧に陳列されていたりする。しかしながら、仕事において同じレベルの詳細なコントロールを海外で要求した場合、多くの国ではそれは、とてもマニアックな要求、若しくは過度に労力を要する要求ととられ、全く歓迎されない。
こうして比較してみると、国毎にいろいろと特長があるのが分かる。世界には色々な国があり、その文化や習慣に違いあるのは当たり前である。頭の中や机上では、我々はそんなことはよく分かっている。しかし、いざ、現場に入って仕事にかかると、ついついそういう違いを忘れて、日本的価値観、自分中心の仕事の進め方をしていまうのである。特に、チームや組織の長となるとその傾向が強くでやすい。
例えば、日本で当たり前と思っている詳細なデーターなどを海外子会社にそのまま要求したりするのはその典型だ。そこまで細かいデーターを集めて仕事をして、仕事効率が悪いとされている日本方式を、そのまま鵜呑みにして海外で行うの必要があるかは検討する余地がある。
個人的な経験で面白いのは、社長の立場で会議に参加する時である。ベトナムや中国であれば、時間ギリギリに会議室に入っても、ほとんどの場合、社長が座る椅子が空けてあることが多い。これが、オーストラリアになると社長の特権階級はなくなり、既にテーブルは埋まっていて、壁際の小さな椅子に座ったりする。ささいなことだが、文化の違いが分かっていないと、思わずムッとすることになる。
1人1人と向き合う
日本人が海外で活躍するためには、その国を理解することが重要であり、また、体系化された異文化理解を深めておくことも重要だと述べてきた。ここで最後に、Global Japaneseとして、海外で活躍するのに、最も重要なことを述べておきたい。
それは、海外の会社に赴任して、現地の社員を部下に持つことになったら、その1人1人と向き合うということである。例えば、オーストラリアは個人主義志向が強い国だからと決めつけないことである。当たり前だが、そこには1人1人個人差がある。異文化理解は、新しい環境に入っていくときの基礎理解に留まる。若しくは、新しい環境で異文化パニックにならないように、プレインプットしておくものである。
グローバルで活躍する日本人になるために、異文化を理解することは、やっとそのスタートラインに着いたということである。そこから、どのように駒を進めることができるかは、あなたが現地の社員1人1人とどこまで向き合えるかにかかっている。
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以下、本記事に関連する過去記事をいくつか貼っておくので、こちらも参考にして頂けるとありがたい。