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【経営メモ】「パーパス経営」について。社員は、社長のベンツのためには頑張れない

今回は会社の「パーパス(存在意義)」について書いてみたいと思う。


1.なぜ今、「パーパス経営」がバズっているのか?

皆さんの会社には、明確なパーパスがあるだろうか?
会社のパーパスを設定する動きは、ここ5年程で急速に広まってきている。

パーパスが設定されていないとしてら、ミッションはどうだろう?
ミッション・ビジョン・バリュー と3つをセットにしてMVVと呼ばれる。
こちらの方は1980年頃から2000年にかけて、大手企業で設定されていることが多い。

MMVミッションもない場合、企業理念はどうだろうか。

パーパスはバズワードのようになっているが、それは、ミッションであってもよいし、企業理念と呼ぶものであってもよいと思う。

そもそも事業は、社会に対して何らかの課題を解決し、ベネフィットを提供するために始められるものである。
本来、世の中に存在するすべの会社、事業はその存在意義を持って生まれたはずなのである。

ところが、本来の存在意義にフォーカスせず、お金儲けや、生きていくためには稼がなければいけないということで、話しが見えにくくなっている。

日本を含む先進国では、これまで経済が右肩上がりで伸びてきて、毎年給料が増え、より多くの物や贅沢な娯楽などを手にすることができたので、会社の「パーパス」(引いては個人の「パーパス」)を意識せずに、単純に沢山働いて、沢山稼ぐというのが、ある意味平均的な皆の幸福なライフスタイルとなっていた。

ところが、変化が激しく、不透明で複雑(VUCA)な時代に入り、経済も真っ直ぐ成長していくか見えない時代、若い世代を中心に、単純に沢山働いて沢山稼ぐというスタイルから、給料以外でどうやって、より幸せになれるか(=個人の「パーパス」)が重要になってきている。

自分の人生の多くの時間を費やす会社と仕事。給料を貰うためもあるけれど、会社や仕事の「パーパス」は何か、自分の幸せにつながっているのか、それは誰かの役立ち、誰かを幸せにする意味のある仕事だろうか、ということにフォーカスが当たっている。

企業レベル、国レベルとしては、SDGs (Sustainable develpment goals)が課題とされており、社会の持続性が議論される中、その文脈の中で会社の存在意義というものを改めて確認、再定義しようというのが昨今の流れである。

2.「パーパス」が会社経営にどう役立つのか

この記事を読んでいただいている、社長さんやマネジメントの方の中には、いまいち「パーパス」がどう自分の会社の中でワークするのか、ピンと来ないという方も多いかと思う。
まずは、その点を明らかにしたい。

以前みかけた記事で、中小企業で働く女性事務社員が毎日の仕事がきつくて大変、こんなに一生懸命、会社のために働いて、そのお金で社長がベンツに乗っていると思ったら、やっていらなれない、というのがありました。
(給料が順調に上がれば、こういった不満も出にくいですが。。。)

本物の「パーパス経営」の図

それは、その社員の認識が、会社のために一生懸命働くという時に、「会社のため=社長のため」となっているからだ。
図の一番左側の構図になる。

会社の組織は階層別に三角形で、その頂点にいるのが社長。
社員は直感的に、自分は社長のために働いていると感じることとなる。

本来会社は、社会に対して何らかの課題を解決し、ベネフィットを提供するために始められたハズ。
(もし、単純に社長が金持ちになる目的で会社を始めたということであれば、残念ながら、お金以外の共感を持つ社員はみつからない。)

会社の「パーパス」をはっきりとさせることにより、社員は社長のために働いているのではなく、「パーパス」のために働くということが意識できるようになる。(真ん中の構図)
そうなると、社員は「会社のパーパス」のために働いていることを認識するようになり、「社長のため」という比重が随分と下がる。

更には、図の一番右にある構図。
これが、理想の「パーパス経営」の状態を表している。
「会社のパーパス」に深い共感を持っている社員だけで会社が構成さている理想形。

パーパスを達成するために、会社を挙げて皆が働く。
そして、社長が全力で社員をサポートする。
こういう構図を作ることができれば、「社長のベンツのためには頑張れない」という文句はなくなる。

そして、世間はおろか、社員も驚くほど、業績が伸びたりするのである。
その事実をもって、「パーパス経営」というのが脚光を浴びている。

3.会社の「パーパス」と個人の「パーパス」

パーパス経営を成功さえせることの一番の鍵は、会社の「パーパス」に共感を持つ人だけを雇うということにつきる。

現行の日本の新卒一括採用、終身雇用制度という中では、ここが一番のネックとなる部分だ。
新卒の頃に会社の「パーパス」を深く考えずに入社。
数年働くうちに、どうも、会社の「パーパス」が自分にしっくりこないと感じる。
それでも、仕方なく、その会社で長く働き続ける。

こういった社員の比率が大きい会社では、会社のパーパス経営は上手く働かない。
そればかりか、社員も仕事で幸せをなかなか感じることができない

本来は、採用にあたり、会社の「パーパス」について深く語り合うプロセスがあるべき。
働いている人全員が、会社の「パーパス」を理解し、共感を持ち、それに向かって働くというのが、会社にとっての理想である。

そして、社員は個人が共感を持てる「パーパス」に向けて、自律的、自発的に生き甲斐を持って働く。
個人のパーパスという視点からも幸福度の高いものとなる。

「会社のパーパスは今年売り上げ50億円を達成することです」、というような言葉を聞くことがあるが、それはパーパスでは全くない。

4.「パーパス」に共感してくれる顧客を大切にする

会社の「パーパス」に共感する社員を雇うのがよいという話しをしたが。更にいうと、「パーパス」に共感してくれる顧客を大切にするということも、大事だ。

ともすると、お金を払ってくれるなら、誰でもお客さんで、皆同じように大事に扱わなければとしがちだが、本来は、会社の「パーパス」に共感してくれる顧客を大切にするのが重要である。

共感してくれる顧客には、より時間をかけて会社ストーリー、商品の
ストーリーを理解してもらう。
共感してくれる顧客は、そうでない顧客に比較して、会社や商品により大きな価値を感じとってくれる。

そのように共感してくれる顧客が、売り上げの中の大きな部分を占めると、その商売は、いたずらに、価格競争に巻き込まれることなく、長期的に安定した商いができるようになる。

5.「パーパス」設定のキーポイント

「パーパス」設定には重要な必要条件がある。

  1. そのビジネスが何らかの形で人類に役立っていること
    一番大切となるのが、そのビジネスが何らかの形で人類に役立っていることである。これは、100人が100人とも同意するような内容であれば最高だが、かりに数人しか同意しなくてもOKである。その数人が本気でそのビジネスが人類に役立つと考えるならば、そこにその「会社のパーパス」をみつけることができる。

  2. 社内によい土壌ができていること
    干上がった土地に種をまいても、何も生まれない。「パーパス」を決めるだけでは、何も変わらないケースは多々ある。「パーパス経営」は高次な経営である。その前提条件として、会社の中に誠意や人間性が溢れていなければならない。社員一人一人が、自分は会社で大切な存在だと感じられる土壌が、社内に必要である。

上記2つの必要条件が満たされていれば、「パーパス」の設定は必ず会社のパフォーマンス、ひいては、個人の幸せに、よい影響を与えるはずである。

具体的な「パーパス」の設定の仕方は、専門の方が既に優れた書籍(記事の下に貼っておく)を出されているので、あまり詳細には触れないが、以下に幾つかポイントをハイライトしておく。

会社の「パーパス」は、
Why :なぜ、会社はこういう事業をしているのか。
How :どのように、事業を進めて、
What :何を成し遂げるのか
という、文脈に沿ったストーリーになるのが理想である。

例えば、パタゴニアのパーパスは秀逸だ。(唯一無二でカッコいい)
Why : 我々の故郷である地球を救うためのビジネスをしたい
How : この理念に共感する社員、共感するアンバサダーとともに、行動する
What : フェアトレードによる衣服。新品より修理品。オーガニックコットン推進。など

このWhy / How / Whatの考え方は、ゴールデンサークル理論(by Simon Sinek)といわれるもので、共感を呼ぶ提言の仕方としてとても有名なものだ。(記事の最後にyoutube動画を貼っておく)

Simon Sinekが取り上げた例として、秀逸なのがアップルだ。
アップルは当初、沢山あった他のコンピューターメーカと比べて、その企業サイズ、組織図、テクノロジーなど特別なところはなく、商品も代り映えないものであった。
しかし、アップルのWhyが力強かった。

Why : 常識を覆す(challenge the status quo)、固定概念をなくす(think different)
How : これまでみたこともないような美的センスと使いやすさ
What : 特別なコンピューターを提供します

当時のthink different ビデオも感動ものなので、記事の最後にyoutube動画を貼っておく)

「パーパス」を設定するということは、つまり、このWhyをどう見つけるかにかかっている。

最後に、私のいたソニーの「パーパス」も優れたものである。
「クリエイティビティとテクノロジーの力で、世界を感動で満たす」
これは、2019年に設定されたものだが、社員からみてもとても納得感のあるものである。

先代の平井社長の4年連続の赤字という厳しい時代に、ソニーは「KANDO」を提供する会社だという方向性を打ち出し、それが、今日の「パーパス」につながっている。

ソニーの場合は、その設立趣意書に「真面目なる技術者の技能を、最高度に発揮せしむべき自由豁達にして愉快なる理想工場の建設」という、今日にも生きているスピリッツがある。

その土壌の上に、「パーパス」が設定されたので、短期間に経営に大いなるポジティブなインパクトを与えるものとなった。

Purpose存在意義
クリエイティビティとテクノロジーの力で、
世界を感動で満たす。
Values価値観
夢と好奇心
夢と好奇心から、未来を拓く。
多様性
多様な人、異なる視点がより良いものをつくる。
高潔さと誠実さ
倫理的で責任ある行動により、ソニーブランドへの信頼に応える。
持続可能性
規律ある事業活動で、ステークホルダーへの責任を果たす。

Sony's Purpose and Values



Appleの「Think Different」の動画

Simon SinekのGolden Circleの動画

参考になる本。ともよてもよく書けている。


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