『ゴーストヤンキー』第1話 感想
エンタメ性、テンポ、お話、昭和、すべてハイブリッドな良作ドラマ
あらすじ
ケガが原因で陸上選手生命が断たれ、
落ちこぼれまっしぐらな風町トゲル(扮する柏木 悠さん)
事故で幽霊(?)状態となったトゲルが出会ったのは、
"昭和"感満載なヤンキーの幽霊『わんぱく団』だった
人間界・霊界が入り混じる世界?
描かれる人間(幽霊)模様は
ドタバタで笑えるのに、なぜか胸熱になってしまう……
痛快青春ドラマ!
開始30秒ほどでお陀仏となるヤンキー達にたまらず笑顔を炸裂させてしまった。思い切りのいい死にっぷりに、Fire stickを握った手指がガタガタと震えて喜びを隠せなかった。
わんぱく団のメンバーがトラック(軽トラ?w)に轢かれてお亡くなりになるというチープで痛快な死にっぷりに、出演者目当てでドラマをチェックした視聴者も爆笑必至だろうなと察して微笑んでしまう。
ギア全開でテンポのいいオープニングは、さながらセンスのいいライブのセトリのはじまりのようですらありました。怒涛の展開のおかげで、あっという間に幽霊と人間が共存する世界に引き込まれてしまいました。
冒頭からラストまで物語がサクサクと進むので見ていてスカッとします。わんぱく団の見た目は18歳の若者だが、中身はばっちり昭和のヤンキー。すきあらば時代錯誤なダサい恥ずかしい言動をかますけれど、トゲルが"令和"の視点でツッコミを入れる。ダレない、わかりやすい、リズム感がいい、会話のテンポが心地よい。
素人ながらにコンテンツの良し悪しを決定づける基準は『リズム感が合うこと』にあります。連続ドラマというコンテンツは大衆向けにどんな人が見ても理解できるように単純な言葉や表現で構成されていることが多いと思っていて、冗長で飽きてしまうため最終話まで視聴しきれないことが多いのですが、『ゴーストヤンキー』は完走が期待できる速いテンポ感が助かりました。
全体的にテンポやリズム感が今っぽい感性で素晴らしかったです。ショート動画系のSNSが流行している昨今は若者の読解力低下が私の中で危ぶまれていると言えども、軽快で無駄がないテンポ感という今っぽさはいいものだと考えています。嫌な無駄がないコンテンツ構造ってそれはそれで味がありますね。
お話の中でずっとちょっと昭和をイジっているのですが、現代に生きるZ世代の中に蓄積した団塊世代に対するストレスをチクチク暗喩として混ぜてくれているようで、こちらまでスッキリしてしまいました。
しかし必要以上に生々しい昭和感はないので気持ち悪さやグロテスクな表現はない、しつこくなくてとてもよかったです。幽霊という設定のおかげで画面におじさんが出てこないからいいのかも。泣いた。
逆パケ詐欺・深いお話
『(命が)いらねぇならくれってんだ』『弱いヤツは強い奴に従うしかない、生きてようが死んでようがそれは同じだ』
コメディタッチなのに端々のセリフが真理をついてるので、もしかして、脚本おもしろい……?とどんどんのめり込んでしまいました。テーマはキャッチーでエンタメ的な外観をしているけど、物事の捉え方の角度が好きです。
今は消え去りつつある暑苦しい昭和とのぶつかり合いにより、日本社会が抱える問題を定義する啓蒙作品か?
『今の時代は脱落したやつの受け皿がない』というセリフ、日本社会の抱える大切な問題だなと思いました。失敗をダメとするのではなくて、失敗してもまた見返そう、またチャレンジしようってマインドにしないとその人は人生ごと潰れてしまうし、失敗したときに隠ぺいしようとする悪循環になってしまいますよね。
ひとつの失敗のせいで、人生再起不能なまで叩かれる日本社会が抱える問題定義まで盛り込まれていることに脱帽でした。
昭和がテーマなのに演出が令和スタイリッシュ
『人生詰んでね?』というトゲルの独白カットで手元のゲーム・グランツーリスモ(版権なしver)コースアウト画面が映る。説明の言葉はないけれど、行く行くはオリンピックか?ともてはやされていたトゲルの人生コースからの脱落を表現してる。
情景を伝えるための最低限の演出効果が各所に光る、視聴者の感性を信頼してくれている構成が好きでした。よくありがちな映像美重視・監督の気取ったカットが入っていないし、評価の高い名作映画・初代ガンダムアニメのように、無駄なカットがひとつもなく素晴らしいと思いました。
また、病院でくたばりかけのジジイにわんぱく団の姿が見えているカットで、彼らが幽霊という設定を思い出させてくれる。さらに、わんぱく団の幽霊は手すりなどの物に触らないように撮影時も徹底されていたらしいです。
意外と設定の筋を通す演出の気遣いと配慮、真の優しさって感じがした(??)そしてだれそうな瞬間にすかさず吾郎がダサい熱いことを言ったりする。喧嘩一緒にしたらもうダチ公とか昭和すぎる!!!!!だっせーーー!最高!と目が覚めて、飽きずに集中できる。
ラストのシーンでバーチとわんぱく団の確執を匂わせて終わる。どういうこと?!続きが気になる!とブルブル歯を食いしばって震えてしまった。ビジュアルはポップでおしゃれだったのだが、ある意味逆パケ詐欺で脚本構成も無駄がなく緩急があり、とてもおもしろかったです。
キャラクター(?)紹介
風町トゲル(扮する柏木 悠さん)
令和の今時の主人公というイメージで合っていた。色白で顔が女の子みたいにかわいい、Z世代っぽいパブリックイメージのある方をキャスティングしていていいですね。昭和ヤンキーと対比になっていてよかったです。
昭和のヤンキーってテーマな時点で私の好きな男たちしか画面にいないから助かったけど、たしかに私の好きな男の人だけ出すと作画がチャンピオンとかヤンマガで画面がギトギトで炭火焼きホルモンみたいになりすぎるので、レモン果汁のようなトゲルの爽やかさのおかげでバランスがよかった。ギトギト大歓迎ではあるが。
富野吾郎(扮する福澤 侑さん)
福澤 侑さんって作画が『チャンピオン』とか『ヤングマガジン』だと思うんですけど、つまりヤンキー役の福澤侑さんサイコーサイコーサイコーでした。福澤侑さんは短ランだということはポーネグリフにも記してある有名な逸話ですが、短ラン最高でした。
「おいてめぇ!このやろう!」などと人生で口にしたことがない侑くんの暴言、魂に染み入りました。「ンだよォ…」の言い方、侑くんめちゃめちゃ慣れとるやないかい。最初のンを消すところ、名古屋のヤンキーの言い方やないかい。名古屋って"20歳になったら禁煙する"という意味不明な理屈で罷り通ったヤンキーであふれた土地なのですが(名古屋市南部出身の従兄弟が実際に言っていたので)タバコ吸う姿似合うな、このタバコNGな令和の世に、助かるなと手に汗を握ってしまいました!
ヤンキーとかチンピラって自分大きく見せたくてポケットに手を入れて肩を大きく回して歩くんらしいのですが(○暴の刑事さんが言ってたので)福澤侑さんは階段を登るシーンなどで自然とその動きができていた。
身体の使い方が上手い人なんだなぁと思いました。観察とお芝居への落とし込みが深いのですね。アクションもかっこいい!
福澤侑さんってダンスがお上手で表現の鍛錬をものすごく積んでいる方という印象があるのですが、表現力って映像の芝居でも活きるんだなと改めて感じてしまいました。ダンスの中でかっこよくキめて魅せる視点を持ってたくさん研究してる努力は素人にも伝わってくるから、福澤侑さんのお芝居は熱くて差し引きが上手くてダレないんだろうなぁ、知らんけど。
馬場龍一(扮する早乙女友貴さん)
おいおいおいおいおい早乙女友貴様でとるおいおいおいおいおいまじかよ焼きそばパン買ってきます、と動揺して小銭をかき集めてしまった。直近に観劇した舞台でレベチな殺陣技術に見惚れてしまった私なので、口元を手で押さえることしかできなかった。
早乙女友貴さんは殺陣うま経歴が長いからか殺気がまじの殺気なんだよな本当の、知らんけど♩
などとウキウキしていると「しけた供ェモンだなぁ」セリフわろたwww早乙女友貴様はまじの殺気が出せるから、ポンコツな台詞が抜け感がありおもしろかった。子分なのに強そうすぎるでしょ……暴霊族の親玉どうなってる?お供物にみかんいいだろ。
林田狼牙(扮する高野 洸さん)
死神リーダー?的な役合ってる!ウィッグなし地毛スーツ+赤いカラコン男なんて凡人がやったら事故ってイタくて恥ずかしいこと必至なのに、本当にちゃんと似合っててすごい。目元が綺麗だから美しくて厨二病にならない、赤いカラコンつけて厨二病にならないって、もはや怖いよ。
高野さんはとても芸能向けの人だと思っていて、身体能力や感覚が一般人とズレてるレベルなどが逆にこのようなキャラっぽい役が合うなぁと思いました。2.5の舞台でここまで爆発的に人気出たのも納得だ!知らんけど♩
千葉丈助(扮する石川凌雅さん)
爽やかでいい奴というパブリックイメージをお持ちな俳優さんなので、まさかの暴霊族側として第一話に登場したラストの展開がびっくりでした。石川さんは好きな俳優さんのおひとりなので、ご本人になんとなく毒がないところがいい要素だと思いますが、なぜかこういう辛口のビジュアルや役柄も似合ってしまうのが不思議だ。石川さんに欲しかった味付けなので助かりました。
だって、好感度が高い爽やかなパブリックイメージを売りにすると、かっこいい人たちがひしめきあう芸能界で埋もれやすいじゃないですか。
せっかくツンデレっぽいヘアメや役も似合うんだからそこを武器として磨いたらいいのに、なんて外野ながらに望んでやまない……ただの自分の好みかも。
佐々岡順平(扮する小坂涼太郎さん)
不器用だけどいい人そうなキャラクター性を付与された人。昭和感のあるイケメン、お若いのになぜ?身体がおおきくて声がいい声でいい。ヤンキーものだけならずシリーズの中にひとりは欲しい人材。
向井知太郎(扮する寺坂頼我さん)
今時のグループの方なはずなのに、昭和感のあるイケメン、なぜ?でも色白でお肌が綺麗で清潔感がある感じがすごく令和でどんな世代の視聴者にも受け入れてもらいやすそう。
ヤンキーもののチームにひとりは欲しい、ヘタレイケメンポジショニングがよかったです。顔立ちが柔和な個性があって色っぽくていいですね。個性的な顔立ちの子がそろっているのいいなぁって異文化交流させてもらえた。
ゴーストヤンキー感想まとめ
正直ドラマとしての出来は想定の100倍は深くて面白くてびっくり!すみません!出演者の皆さんお芝居が上手いなと思いました。監督の采配や指導が上手いのもあるのかなぁ。
私はコンテンツの中で映画が一番好きなのですが、ドラマというより映画みたいなカットの割り方と早いテンポ感で爽快感があり、好きでした。
大好きな福澤侑さんがいい役で、見せ場もたくさんあって助かりました!この企画くれた人と深夜の学校で窓ガラス割ってまわりたいです!続きも見ます。
『ゴーストヤンキー』概要
2024年4月18日(木) 放送開始
MBS 24時59分~
テレビ神奈川 23時30分~
チバテレ、とちテレ、テレ玉、群馬テレビ他
Tver、FODで見逃し配信中
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