静かな山登り
先日数カ月ぶりに山へ登った。
コースはおよそ5時間。
久しぶりだったので心配もあったけれど、やっぱり自然の中は気持ちが良い。
歩き始めてすぐはまだ私の頭の中は雑念でグルグルしている。
普段考えていることや、一緒に歩く人への気持ちや、仕事のことなど、今ここで考えなくてもよい様々なことを頭が勝手に考えている。
せっかく遠くまで来たのだから、余計なことを考えないようにと思っても頭のどこかで考えている。
もうこれは頭の中の思考回路にクセがついてしまっているのだと思う。
新幹線の中で読み始めた養老先生の本のことを思いだす。
考えても仕方ないことにはどう対応するのか。覚悟するしかない。
そんなようなことが書いてあった。
私が普段の生活で考えている多くのことは、考えていうのとは違う。
答えのでないことを心配したり、不安になったり、人付き合いのことだったり、私の頭の中の多くはそんなことだ。改めて思うととても情けないと思う。
現に今だって、せっかく山に来たのにどうでもいいことを考えている。
ただ歩くことに意識を向け、光を感じて、風を感じる。
しばらく歩いているうちに自然と頭の中の雑念は消えていた。
この感覚、とても心地よい。ずっと浸っていたい、忘れたくない瞬間だった。心の奥にあるものすべてが大きな自然に吸い込まれて解放されていく。頭も心も空っぽだった、そして自然に満たされ瑞々しかった。
サウナで整うという表現を耳にするけれど、こういう感じが整うという感じなんだろうなと思った。
紅葉がすでに終わった山は人が少なくて静かだった。
一緒に山へ行った友人も無駄なおしゃべりをしない人だったので、静かに山を歩くことができた。
こういう山登りが好きだなあと思う。
細胞のひとつひとつが生き返るのを感じた。
また静かな山へ登りたい。
自然の包容力で私の生命力は満たされる。
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